「勢い出る」「火が付いた」 南城市長選の新人勝利、名護への影響注視


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南城市長選の結果を受け記者団の質問に答える沖縄県の翁長雄志知事=22日、県庁

 21日投開票の沖縄県南城市長選で「オール沖縄」勢が推した新人の瑞慶覧長敏氏が、自民、公明、維新が推した現職の古謝景春氏を下した結果は、辺野古新基地建設問題で全国から注目を浴びる2月の名護市長選に立候補を予定する両陣営に衝撃を与えた。現職の稲嶺進氏を推す陣営は「相当大きな勝ちだ。勢いが出る」と語り、新人の渡具知武豊氏を推す陣営は「運動自体の見直し、反省が必要だ」と引き締めを図る姿勢だ。結果を受けて政府・自民党も渡具知氏支援へ一層力を入れる構えだ。

 「なんで負けるんだ。負けるような選挙ではなかったはずだ」。22日午前、渡具知陣営の会議で公明関係者は声を荒らげた。名護市長選と同じ自公維の連携で臨んだ南城市長選での敗北にいらだちをあらわにした。

■「運動の見直しを」

 22日夜に名護市内で開かれた渡具知氏の総決起大会で、公明党県本代表の金城勉県議も「保守層は『勝つんじゃないか』とふんわりしている。その結果が65票の惜敗につながった」と参加者に強い口調で訴え、運動の強化を求めた。

 渡具知陣営関係者は「南城市の結果は、こちらの選挙にとって悪い影響しかない。僅差で届かなかっただけに全体の士気も下がる」と懸念を吐露する。自民党県連幹部は「運動そのものの見直し、反省が必要だ。名護市での取り組みも上滑りしていないか見直す必要がある」との考えを示した。

■1票の重さ

 「オール沖縄」勢は市長選で連敗していただけに、南城市長選も同様に敗北するのではないかと懸念していた稲嶺陣営関係者は「『チーム沖縄』のリーダー格に勝てたことは、われわれ陣営にとって相当大きい」と上気した表情を浮かべた。

 約2万3千票が投じられた中の、65票差での勝利。同関係者はその点にも注目する。「うちも厳しい選挙だ。南城市長選の結果は、運動員や支持者に1票の重さを訴えられる」と今後の運動の方針を語った。

 選挙翌日、県庁に登庁した翁長雄志知事は記者団に受け止めを問われ「大変勇気づけられる」と若干安堵(あんど)の表情を見せたものの、名護市長選との関連を問われると「(南城市の結果は)ありがたいが、選挙は一つ一つ勝っていくものだ」と語り、厳しい表情に変わった。

■戦える態勢に

 与党関係者の一人は「南城市は自民党の世論調査でも厳しかった。一度も(瑞慶覧氏を)抜けなかった」と、南城市長選の結果は想定の範囲内だったとの認識を示した。その上で「でも、名護市は雰囲気が良くなってきている。戦える態勢になってきた」と名護市での支持浸透に自信をにじませた。

 「名護に影響しないことはない」。別の関係者はそう語った後、こう言葉を付け足した。「でも、いい意味でだ。これで自民党は本気になる。(南城市長選での敗北は)火を付けたはずだ」。今後、自民党本部の渡具知氏支援が一層、強くなると見通した。(名護市長選取材班)