鉄の拳152秒で決着 ボクシング大吾防衛、歴史切り開く


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 プロデビュー以来連続KO勝利を続ける世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者の比嘉大吾(白井・具志堅スポーツジム)が4日夜、那覇市の県立武道館で2度目の防衛戦を行い、挑戦者のモイセス・フエンテス(30)=メキシコ=を1回2分32秒でリングに沈めた。浜田剛史氏らが持つ日本記録の15戦連続KOを成し遂げ、歴史に名を刻んだ。具志堅用高会長が1981年3月、14度目となる世界防衛戦を具志川市(当時)で行い、敗れ引退を決めた。まな弟子・比嘉が衝撃的なKOで雪辱の勝利を飾った。比嘉は1回、打ち終わりに来るフエンテスの右パンチを警戒しながら、落ち着いた動きを見せた。上下にパンチを打ち分ける中で、カウンターの右ストレートが決まり、フエンテスをぐらつかせると、その後もリズムに乗った連打が出た。残り1分を切ったところで右ストレートや左ボディー、左アッパーなどが決まり、最後は右ストレートを相手ボディーに決めダウンを奪い、勝負を決めた。比嘉のほか、この日は6試合を行った。未来を担う県出身の小田翔夢(白井・具志堅スポーツジム)や仲島辰郎(平仲)、大湾硫斗(白井・具志堅スポーツジム)らも勝利をつかみ取るなど、ボクシング王国復興を期待させた。

 ガードの上からモイセス・フエンテスの動きを見切った比嘉大吾が1回中盤から仕掛けた。右ストレートで勢いをくじくと、コーナーに下がるフエンテスに左のボディーとアッパー、そして右ストレートをボディーに入れ、とどめを刺した。

 崩れる挑戦者。レフェリーのカウントとともに「もしかして」と会場全体に広がる期待通り、電光石火の2分32秒のKO劇となった。「1回で倒せるとは思わなかった」。自身も驚く「瞬殺」に比嘉がほほ笑んだ。

 前日計量後の栄養補給でしっかり体重を戻し、みずみずしい体でリングに立った。様子見の1回出だし、左ジャブを繰り出す瞬間に右のクロスを当てられたことで警戒心が高まった。下がりながらフエンテスの動きを分析し、右のストレートを放った。「あれで勝負が決まった」(具志堅用高会長)。ぐらつかせた相手に対し、一気に猛攻を仕掛け、守りが固まる前に一瞬で勝負を決めた。

 「最後のボディーじゃなく、まとめた(パンチが)ダメージになったと思う」。最後の連打は2016年に東洋太平洋(OPBF)フライ級タイトルマッチでダウンを奪った時と同じコンビネーションだったという。

 勝利後、具志堅用高会長を育てた故・金城眞吉氏の遺影を掲げた。男泣きする具志堅会長を見た後、マイクを向けられた比嘉は「特別なチャンピオンにこだわるため、KOを続けます」と宣言。観客の大声援を浴びながら、この日一番の笑顔を見せた。(嘉陽拓也)