運転中の意識不明、奇跡のリレー救う 嘉手納町、3人が機転と経験生かし


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人命救助の感謝状贈呈式=1月31日、沖縄県嘉手納町の県警嘉手納署

 沖縄県警嘉手納署はこのほど、人命救助に当たった3人に感謝状を贈呈した。偶然が重なり合った奇跡の救出劇が、自動車を運転中に急性心筋梗塞で意識不明となった嘉手納町の77歳男性の命をつないだ。男性の長男(51)は「迅速な処置のおかげで後遺症もなく退院できた」と3人に感謝している。

 表彰を受けたのは小学校教諭の新垣尚子さん(45)と元看護師の中川恵子さん(29)、医師の池原幸雄さん(83)。3人は男性の無事を喜んだ。

 救出劇は18日午後4時半ごろ、嘉手納町の町道で起きた。新垣さんが信号待ちをしていると、前の車が信号が赤から青になっても進まなかった。運転手の首の位置に違和感を抱いた新垣さんが車から降りて近づくと、運転席の男性が意識を失っていた。

 その場を「エンジンの故障と思って通り過ぎようとした」という元看護師の中川さんも異変に気づき、前方に車を止めて駆け寄った。中川さんは看護師の経験を生かし、脈を失っていた男性に心肺蘇生法を施した。

 新垣さんは偶然目の前にあった池原内科に行き、助けを求めた。院長の池原さんら職員が手際よく自動体外式除細動器(AED)を使って、男性の応急処置に当たった。

 さらに偶然が重なる。男性の長男がその場を車で通りかかった。車から降ろされている父親を見て、車を降りた。救急車で来た救命士に父が心臓に持病を抱えていることなどを伝え、適切な処置につなげた。新垣さんは「歯医者に行く予定があって、いつもは通らない道だった」と振り返る。中川さんも午前の予定に行き損ねたから通った道だったという。

 池原さんは「心筋梗塞では1分遅れるごとに救命率が下がる。治療が早かったから後遺症もなく助かった」と説明。「みんなが知識を持っていれば、助かる命がある」と強調した。

 1月31日にあった感謝状贈呈式で嘉手納署の砂川淳署長は「それぞれに最善の行動をしてもらって、尊い人命を救うことができた」と感謝し、救助をたたえた。