【島人の目】在沖米基地と国際社会


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「21世紀国際社会を考える」という本の第3部第7章に掲載されている波照間陽(しの)さん(32)の論文「沖縄の米軍基地問題と国際社会」を読んでとても感動した。波照間さんは早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程で国際関係論を専門領域としている。

 波照間さんとの出会いは2007年7月。早稲田大学3年の波照間さんがカリフォルニア大学デービス校に短期留学し、その修了式に県立芸術大学名誉教授で父親の永吉さんら家族が参列し、北米沖縄県人会を訪れた時であった。以来、私は波照間さんを娘の一人と思って接してきた。

 本そのものを私は読んだわけではなく、たまたまフェイスブックで波照間さんが自分の論文を紹介していたので、論文全文をメールしてほしいと頼んだ。波照間さんからは「こうやって研究の道を着実に進んできているのも、当銘さんの温かいサポートがあってのことです。改めてお礼申し上げます」とのうれしい便りが添えてあった。

 これまでに沖縄の基地問題に関する論文や本、記事など多くを読んでみたが、私にとって、この論文ほど沖縄の基地問題と国際社会との関連性を分かりやすく、興味深く説明したものに出合ったことはなかった。

 沖縄の基地問題に対し、「なぜこれほどまでに日本政府やアメリカは沖縄に米軍基地を設置することにこだわっているのだろうか」「普天間飛行場の代替としてなぜ日米両政府が辺野古でなければならないと考えているのか」といった疑問にこの論文は応えてくれている。

 波照間さんの論文には、どちらが正しいとか、どうあるべきとかは書いていない。日本政府から沖縄への支援と補償、日本政府に怒れる沖縄、米国を頼る日本、米国にとっての日本などを知るには「沖縄」「日本」「アメリカ」の三角関係の現状を知ることが重要ではないかと強調する。現状説明に主眼を置き、読者の判断に任せているように私には思える。多くの階層の人々に読んでほしい。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)