【アメリカ】劇作家・城田さん5000ドル寄付 高校に奨学金提案


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劇作家のジョン・城田さん(右)と妻バーバラさん=米カリフォルニア州の自宅

 「世の中のために何を残すことができるのか」―。90歳を迎えた沖縄県系2世の劇作家、ジョン・城田さんは昨年、イリノイ州マーシャル高校に5千ドル(約55万円)を寄贈し、奨学金の創設を申し出た。寄付金は「ジョン・シロタ奨学金」として、今後10年間、毎年優秀な作品を書いた生徒1人に500ドルを提供する。

 高校があるマーシャル市は、城田さんが劇作家になるために、研さんを積んだ場所だ。同市には1950~64年、「ライターズ・コロニー」という新進芸術家が執筆に専念できるようにした場所があった。コロニーの名を世に知らしめたのが小説家のジェームズ・ジョーンズ氏の存在だ。米軍内部を描いた小説「地上(ここ)より永遠に」(51年)は、全米図書賞を受け、映画化され、53年、アカデミー賞を受賞した。

 「ライターズ・コロニー」の会長だったローニー・ターナー・ハンディーさんは、ユタ州のブリガム・ヤング大学を卒業して、カリフォルニア州の税制管理局に勤務していた城田さんを63年に呼び寄せ、同協会の会員に迎え入れた。

 コロニーには約2年、滞在した。城田さんは当時のことを「ジェームズ・ジョーンズの作品に接触することほど大きな刺激が与えられたことはない。一生忘れがたい」と振り返る。コロニーを通して今も師と仰ぐジョーンズ氏の作品と出会ったことは、若き城田さんにとって劇作家として飛躍するきっかけになった。

 ロサンゼルスに移り住んだ城田さんは「レイナニのハイビスカス」「ラッキー・カム・ハワイ」「パイナップル・ホワイト」などハワイに渡った沖縄移民を描いた作品を次々に発表。作品はハワイ、沖縄、日本本土、ロサンゼルス、ニューヨークなどで演劇として上演され、ジョン・F・ケネディ賞、ロックフェラー賞、アメリカン大学シアター賞など多くの賞を獲得した。

 城田さんは現在、高齢のために執筆活動はほとんどしていないが、ロサンゼルスの隣接都市ハシエンダハイツで妻のバーバラさんと2人で暮らしている。(当銘貞夫通信員)