伝統芸能 キャンバスに 35年創作一筋 画家・玉城栄一さん 北中城で作品展


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人生の半分を画家として生きる玉城栄一さん=1日、北中城村内のアトリエ

 【北中城】沖縄県北中城村在住の日展作家、玉城栄一さん(70)の画家生活が35年を迎える。「絵を描くのが好きだ」という思いを抑えきれず、35歳のときに勤めていた銀行を退職し、絵描きになった。人生の半分を画家として生きてきた玉城さんが得意とするのは、伝統芸能の舞台に立つ前後の踊り手たち。表情や色使いで、モデルの内面性を表現する。玉城さんは「後世が決めることだが、美術館に1点でも残せるような絵を描きたい。現状に満足はしてない」と創作意欲を燃やしている。

 看板や肖像画の店を営む父親の下、幼い頃から絵に親しんでいた。20代半ばで、日展作家・名渡山愛擴さん(故人)の講習会に参加したことを契機に、絵描きを志した。講習後も名渡山さんの下で学び、展覧会で入選するように。「やらないより、やって後悔だ」。絵に専念したい気持ちが芽生え、勤め先に辞表を提出した。

 名渡山さんの他、日展審査員も務めた桐野江節雄さんにも師事した。風景画や人物画の指導を受ける中、沖縄の伝統芸能の担い手を描くようになった。県外での展覧会の出品が増えてきた矢先に「沖縄のいいものを見せ付けよう。沖縄を背負って、東京で全国と競おう」と思うようになった。

 周囲の反対を押し切って画家になったが、収入は少なかった。妻の恵津子さん(70)とカフェを営みながら、生計を立てた。展示会への入選を重ねるにつれ、収入も増えてきた。

 玉城さんは「絵を描くというのはわがまま。生活しなけばならないし、そのためには売れないといけない。絵の楽しみや苦しみが分かる」と語る。「応援してくれる人も見つかる。そうなると自分本位ではなく、社会のために描こうと思うようになる。今が一番充実している」と笑顔を見せた。

 玉城さんの作品展が4月30日まで、北中城村のイオンモール沖縄ライカム内にあるトラベルマートきたポで開催されている。問い合わせはきたポ(電話)098(923)3601。