東京メトロポリタンテレビジョン(東京MX)の番組「ニュース女子」について、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は8日、東京MXに対し、ヘイトスピーチ(憎悪表現)反対団体「のりこえねっと」の辛淑玉(しんすご)共同代表への人権侵害を認定し、勧告趣旨の放送や、3カ月以内に再発防止策を提出することなど求める勧告を出した。
勧告を受け、東京MXは8日のニュース番組で勧告を受けたことを報じ、再発防止に努めるとのコメントを発表した。訂正や謝罪はしていない。
辛さんは会見を開き「BPOの決断は、放送人の最後の良心の決断だったと感じている」と評価した。代理人によると、今後も東京MXに人権侵害の回復に向けた行動を働き掛け、応じない場合には法的手段も検討するという。
2017年1月に放送された「ニュース女子」は、米軍北部訓練場のヘリパッド建設に反対する市民をテロリストに例え、辛さんを「黒幕」のように報じた。放送人権委員会は、番組で報じられた、反対運動への「日当」や「黒幕」など真実性の証明がなく、辛さんへの名誉毀損(きそん)に当たるとし、最高裁の判例などを基に判断した。
放送倫理上の問題については、辛さんに取材をしていないにもかかわらず、東京MXの考査で問題とされていないことや、反対運動に朝鮮人や中国人がいるなどと特定の国籍や民族的出自を出して、在日韓国人である辛さんと関連づけたことに「人種や民族を取り扱う際に必要な配慮がなされていない」などと指摘した。
東京MXは「勧告を真摯(しんし)に受け止め、現在進めている再発防止策を着実に実行し、信頼される放送の推進に努める」とコメントした。