理学博士の下謝名松栄さん(79)が1979年に宮古島の洞窟から採取した雌グモが、琉球列島では未確認だった「タイヘイヨウスナツブグモ」だったことが14日までに分かった。日本では2007年に初めて小笠原諸島で雄の個体が確認されたが、雌の個体が識別されたのは初。同種が洞窟内で採取された例も世界初となる。下謝名さんは「沖縄は地表だけでなく洞窟の中にも生物多様性が息づいている。小さな命の解明が島の歴史を知る重要な鍵の一つになり得る」と語った。
タイヘイヨウスナツブグモはヨリメグモ科で、主に米ハワイ州など南太平洋の島々に生息する。体長は最大0・9ミリと砂粒のように小さく、林の中や落ち葉の下などの環境を好む。
下謝名さんは1979年と82年に宮古島のリンコウアブなど五つの洞窟で雄6個体、雌8個体を、84年に多良間島のアマカーガーで雌1個体を採取した。昨年11月、小笠原諸島の個体を確認した国立科学博物館動物研究部の小野展嗣主幹研究員に相談したところ、背甲や腹部などにある点刻や生殖器の特徴などからタイヘイヨウスナツブグモであることを突き止めた。
同種には通常目が六つあるが、多良間島で採取した雌は目が退化しほとんど痕跡が残っていなかった。宮古島の雌8個体のうち7個体も目はあるが退化が進んでいた。一方、雄は全個体六つの目がそろっていたため、目の退化の進行状況は雄雌で異なることが判明した。退化の度合いの違いについて、宮古島より多良間島の方が歴史が浅いことを挙げ「洞窟をつくり出す石灰岩の新旧ではなく、気温や湿度などの生息環境が大きく影響している可能性が高い」と分析した。(当銘千絵)