【ブラジル】“オバー直伝”の味 好評 県系人食堂、民謡ライブも


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サンパウロで沖縄料理の食堂「Oishiisa!(おいシーサー)」を営むノエル・ペレス・仲村渠さん(右から2人目)と佐辺メイレ千歳さん(同3人目)夫妻

 県系人の佐辺メイレ千歳さん(42)とノエル・ペレス・仲村渠さん(39)夫婦がサンパウロ市イピランガ区で営む沖縄料理の食堂「Oishiisa!(おいシーサー)」が盛況だ。食堂は2011年9月にオープン。ゴーヤーチャンプルーやナーベラーなど“オバー直伝”の沖縄の味は県系人だけでなくブラジル人の舌も喜ばせている。

 佐辺さんは国頭村と大宜味村の県系2世で、ブラジルで育った。県費留学生として2002~05年に琉球大学に留学。02年、同じ県費留学生でメキシコ出身の名護市3世の夫、パレスさんと出会った。2人は結婚し、メキシコで生活を始めた。

 メキシコは、ブラジルに比べ県系人や日系人が少なく、幼いころから、親しんできた沖縄料理や習慣などが身近になかった。ウチナーグチに接する機会も少なく、佐辺さんは「恋しくなった」という。「私が恋しいと思ったように、ブラジルに住む多くの県系人も、同じではないか。沖縄社会は大きいが、祖父母や両親がいなくなって、ゴーヤーチャンプルーやナーベーラーを作る人、シブイを植える人もいなくなっている。味は知っているけど調理できないようになっている」と話し、「何とかしないと」と感じたという。

 元々食べ物を扱う商売をしたいと考えていた。夫婦はブラジルで食堂を開くことを決め、「オバーがどんなものを作っていたのか忘れないために」と沖縄料理の店にしたという。佐辺さんは「イリチャーやンブサーが食べたいけど法要や正月まで待たないと食べれない。食べるのに人が亡くなるのを待つ必要はない」と、沖縄料理を提供する意義を語る。ブラジルの沖縄料理は沖縄の伝統料理と一緒ではなく、沖縄の人がアレンジしたものだという。

 沖縄を体感してほしいと、食堂で民謡ライブを開催。店内に流れるBGMももちろん沖縄の音楽だ。民謡ライブを見ようと、各地からさらにお客さんが集まるようになったという。「テーブルが邪魔になるくらい」と笑顔で話す佐辺さん。何よりも高齢のお客さんから「昔を思い出した」と聞き、うれしかったという。
(城間セルソ明秀通信員)