1985年に日米両政府が米軍伊江島訓練空域の上空5千フィート(1524メートル)以上の飛行を民間航空機に認めると合意したことについて、在沖米海兵隊は29日までに、訓練空域が「使用中」である場合は通航は認めないとする認識を示した。日米合意が形骸化していることが改めて浮き彫りになった。85年の合意が有効かどうかについての言及はなかった。沖縄県外から那覇空港に着陸する国内便は伊江島訓練空域を迂回(うかい)せざるを得なくなっている。
米海兵隊は「伊江島訓練空域で軍事行動が取られていない時には、民間機による上空飛行は規制されない」とした。一方で「空域が使用中の場合、管制官が周辺の民間機に進路変更を指示する」とし、高度5千フィート以上であっても通航は認められないとの認識を示した。
民間機による伊江島訓練空域の上空飛行については85年3月の衆院予算委員会で、運輸省(現国土交通省)航空局長が、那覇到着便に対して5千フィート以上の飛行を認めることで米側と合意したと説明した。
米軍は伊江島訓練空域では通常低高度で訓練しているため、5千フィート以上であれば、訓練空域が使用中でも米軍の運用に支障なく民間機を通すことができることが背景にあった。
国会答弁で運輸省は85年4月からこの合意を実施すると説明していたが、航空関係者によると、その数年後には再び上空飛行が禁止されるようになった。現在、伊江島訓練空域は高度1万5千フィートまでを進入禁止としており、訓練場が「使用中」の場合は北方面から那覇空港に着陸する民間機は、管制の指示に従って同空域を避けて大回りしている。航空関係者によると、迂回が常態化している。
一方、国土交通省那覇空港事務所は28日、米側の見解について「日米両政府の同意がない限り、合意があるかないかも含めてお話できない」とした。