「この歌、教えてほしい」 70年前の卒業式で歌唱 照屋さん新聞投稿に情報続々


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照屋徳明さんの疑問に情報を寄せる投稿をした一人、當眞洋一さん=5日、宜野座村松田

 「この歌、教えてほしい」。沖縄市の照屋徳明さん(79)が約70年前、学校の卒業式で歌った覚えのある歌について情報を求めた投稿が3月15日付の本紙オピニオン面で掲載された。インターネットで検索しても情報が探せないという投稿に対し、情報を寄せる投稿が続いた。電話で情報を寄せる読者も相次いだ。投稿掲載をきっかけに歌の記憶をたどる輪が広がった。

 卒業式の季節を迎えるたびに歌を思わず口ずさんできた照屋さん。好きな歌だが「曲名も歌詞も定かでない」状態だった。先輩や友人に聞いても分からず、インターネットで検索してもらったが、手掛かりはなかった。

 投稿で照屋さんは、記憶にある歌詞を「長き年月 懇ろに 教えの庭に うち連れて そのみ恵みを 千代かけて 忘れはせじな 師の君を」と記した。

 すぐに反応があった。宜野座村の當眞洋一さん(82)は照屋さんの投稿を読み、明治23年生まれの祖母が同じような歌詞を「卒業の歌」として、よく歌っていたことを思い出した。當眞さんの投稿は翌3月16日付で掲載され、2番の歌詞まで紹介した。「母は、先生と生徒の情愛を表していると説明していた」と當眞さんは振り返る。

 3月24日付では那覇市の伊良皆貞雄さん(77)が3番までの歌詞を投稿し「ほぼ同年代の私も卒業式で歌った」と振り返った。

 歌詞は投稿者によって微妙な違いがある。最初に投稿した照屋さんは正確な歌詞を知るため、さらに資料を探す考えだ。「インターネットに出てこなくても、高齢者にとっては新聞の方が身近だ。みんなに教えていただける」と実感した。

 興味深く投稿を読んだ同世代の読者も多い。読谷村波平の宮城壮成さん(78)もその一人。数年前、村の資料館で音楽教員だった渡久山朝章さんが3番までの歌詞を含めて書いたコラムを読んだことがあり、相継ぐ投稿に引き寄せられた。宮城さんは「80、90歳の人には今もこの歌を聴くだけで涙が出るという人もいる。短期間に投稿が続いたのも、この世代の人たちの関心の高さだろう」と語った。