計量失敗「まさか」、陣営謝罪 比嘉大吾王座剝奪、鍛えた肉体、削りきれず


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計量オーバーをして下を向く比嘉大吾(右)、しゃがんで手で顔を覆う具志堅用高会長(左から2人目)=14日、東京都内のホテル(大城直也撮影)

 沖縄ボクシング界のニュースターとして、デビュー以来連続KO勝利で世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者となり、15日に3度目の防衛戦に臨むはずだった比嘉大吾(22)=沖縄県浦添市出身、宮古工業高出、白井・具志堅スポーツ=が計量失敗で王座を剥奪された。比嘉は計量で51・7キロとなり、制限体重(50・8キロ以下)を超えた。2時間の猶予を与えられたが、再計量はしなかった。報道陣の前に姿を現した具志堅用高会長は謝罪し、「あっちゃいけないことが起きた。まさかという気持ち。ボクシング関係者、ファンの皆さまに本当に申し訳ないです」と述べ、深々と頭を下げた。比嘉は姿を見せなかった。15日の試合は実施される予定だが、午前の計量で比嘉が55・3キロを超えた場合は中止となる。日本ボクシングコミッション(JBC)は試合後、比嘉の今後の試合への出場停止処分も含めた制裁を協議するという。比嘉の戦績は15戦15勝(15KO)、ロサレスは29戦26勝(17KO)3敗。

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 ボクサーにとって避けられない減量の苦しみは、4回戦選手でも世界王者でも、対戦相手と同等に闘うスタート地点に立つための必要なプロセスだ。だが、3度目の防衛戦に挑む比嘉大吾は、16戦連続KO勝利という日本記録が懸かる大一番を前に計量をクリアできなかった。くしくも昨年5月、体重超過で王座を剥奪された前王者をKOで倒し、フライ級王者になった比嘉。それから11カ月後に同じ轍(てつ)を踏んでしまった。目に涙を浮かべて計量会場を去る比嘉の表情に、計り知れないほどの後悔がにじんでいた。

 野木丈司トレーナーによるフィジカルに特化した練習で比嘉の胸囲は97センチと今回、挑戦者より18センチも大きい。身長やリーチでは劣るが、小柄な体に大排気量のエンジンを積んだような仕上がり。胸囲だけなら、ミドル級タイトルマッチに挑む村田諒太の98・5センチと同等だった。鍛えてきた肉体がKO劇を支えてきたが、減量のリスクも常に背中合わせだった。

 今回はスタッフの手作りの特製弁当で食事面にも気を配ってきたという。減量前の体重のピークは比嘉も、挑戦者クリストファー・ロサレスも、ともに62キロ。比嘉は2月の防衛戦の後に増えた体重を減らしたが、ロサレスは「3カ月かけて体重を落とした」という。

 その差が出たのか、ロサレスは12日の予備検診や13日の調印式も余裕の表情。一方、比嘉は、12日は寝癖のついたままの髪が印象的で、無精ひげを伸ばした顔に元気がなかった。13日はいくぶん血色が良くなり、「(減量は)いつもと変わらない」と淡々と語ったばかり。だが、具志堅会長は「今までで一番苦しそう」と見ており、その不安が的中した。

 体重超過により、勝っても負けても厳重な処罰を受ける可能性がある。短期間で組んだ防衛戦があだとなったか、減量がきついフライ級にとどまったことが要因か。まずは目の前の試合に勝つことが最優先だが、いばらの道は避けられそうにない。(嘉陽拓也)