差別の痛み伝える ハンセン病患者、回復者、家族の実体験 講談で再現


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ハンセン病患者や家族の苦しみを語る伊藤貴臣さん(中央)=20日、名護市の沖縄愛楽園交流会館

 【名護】名護市済井出の沖縄愛楽園交流会館で20日、ハンセン病患者や回復者、家族らが受けた差別や偏見による苦しみを描いた舞台「講談風語り 風の鳴る丘 沖縄愛楽園編」が上演された。鑑賞した同園入所者や退所者ら約70人の中には自身の経験を思い出し、涙する人もいた。

 「風の鳴る丘」は、ハンセン病回復者で同園ボランティアガイドを務める平良仁雄さん(78)や、今も同園に入所している女性の体験を基に創作された。奈良県でイベント企画会社を営む市竹裕さん(49)が台本を書き、関西でラジオパーソナリティーなどとして活動する伊藤貴臣さん(41)が「語り」を担当した。

自身の体験を基にした語りを聞く平良仁雄さん

 ハンセン病患者の人権を奪い、強制隔離させた「らい予防法」への怒りや、家族から「はごーさん(けがらわしい)」と言葉を浴びせかけられた回復者の女性の痛み。妻が自死した男性の叫び。苦しい状況にあっても生きることをあきらめない大切さ。伊藤さんは声を震わせ、怒鳴り声を上げ、体を大きく使って熱演した。

 上演後、平良さんは「生きることが何より大切だと改めて実感した。何か問題を抱えて悩んでいる人に見てもらいたい」と話した。伊藤さんは「差別や偏見から声を上げられない皆さんの代弁者として語った。これからも語り続けていく」と話した。

 「講談風語り 風の鳴る丘」は21日午前10時から宜野湾市の東本願寺沖縄別院、22日午後7時から那覇市のアルテ崎山で上演される。21日は無料。22日はピアノ演奏もあり、入場料1500円。問い合わせは沖縄愛楽園交流会館(電話)0980(52)8453。