チェコのプロ野球リーグ「チェコエクストラリーグ」で“助っ人外国人”として奮闘している那覇市出身の選手がいる。植夏彦(22)=安謝小―安岡中―那覇高―福岡大出=で、この春に大学を卒業し入団した新人だ。リーグの絶対的王者との今季開幕戦では2番捕手として先発出場。試合は敗れ、自身も無安打に抑えられた。悔しいスタートとなったが、開幕してもうすぐ1カ月、打率2割9分4厘と攻守での奮闘が続く。植は「助っ人として結果を出し、チームを勝利に導く」「最低でも5年間は海外のプロリーグで野球を続ける」ことを掲げ、ヨーロッパでの一歩を踏み出している。(外間崇)
マイナー競技
植が入団したチームはオリンピア・ブランスコ。大学時代の先輩が卒業後にオランダで野球を続けており、大学4年の時に海外プロ野球の情報を得ながら、卒業時にチェコのプロチームとの契約に至った。チームはエクストラリーグ最高位の1部に属している。リーグは週に2、3試合を行い、9月末までにおよそ60試合をこなし優勝を争う。1部は現在、10チームで構成され、昨季のチームは最下位の10位だった。
ヨーロッパでは野球もマイナー競技で、待遇はあまりよくないという。リーグの選手は銀行員や料理人など別の仕事を持ちながら「副業」としてプレーしている選手もいる。植は月給制で、チームメートとシェアハウスをしながら生活し、練習に取り組む。チームには四国独立リーグ出身の日本人選手も1人おり、エースとして期待されているという。
「楽しむ」
植は捕手を中心に、三塁手や時にマウンドにも上がる。チームは27日現在、9連敗中で、白星から遠ざかっており、助っ人としての責任も感じている。
チェコのリーグはレベル的には日本の野球に及ばないが、体格が大きいために、投打の力強さが特徴だという。その中で植のモチベーションを支えるのは「野球を楽しむ」プレースタイル。勝敗を求める姿勢はどのチームも同様だが、結果だけにこだわらない選手の前向きさが共感できると話す。
「忍耐や厳しさももちろん大事だが、野球に打ち込む表情や環境が自分に合っている」
海外へ
植は小学校で九州3位、中学は九州準優勝と好成績を残した。学業も両立し取り組みたいとして那覇高校に進学。高校では1年の夏から正捕手についた。しかし大学は、3年の秋までBチームの試合にすら出場できなかった。
Aチームに上がれない仲間たちが野球部を辞めていく中、努力を怠らず4年の春に念願のベンチ入り。公式戦の出番はなかったものの、全国神宮大会を経験した。
全国レベルの選手たちと競い合い、一定の成果を出したことが自信になり、卒業後の海外でのプレー継続につながった。
高校時代に監督だった前川等さん(南風原高教諭)は「捕手として守備の要としてチームをまとめてくれた。努力家で野球が大好きだという姿が常に伝わっていた」と振り返り「LINEで本人からチェコリーグ入団を聞いた。頑張ってほしい」とエールを送る。
身長165センチ、70キロと小柄だが、「自分の持ち味は守備。肩とブロッキング、インサイドワークには自信がある」と守りをアピールしての正捕手取りと活躍を期す。
課題の打撃は「ミート中心を意識し、最低でも3割を打ちたい」と意気込む。
盗塁阻止率と捕逸阻止数のリーグトップ5入りをルーキーイヤーの目標にし、新天地で大好きな野球に打ち込む。