推薦取り下げも選択肢 奄美・琉球世界遺産 環境相、延期勧告受け


この記事を書いた人 大森 茂夫
緑に覆われた沖縄本島北部のやんばるの森

 【東京】中川雅治環境相は8日の会見で、国際自然保護連合(IUCN)が世界自然遺産を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の登録延期を勧告したことを受け、推薦の取り下げも選択肢に今後の対応を判断する考えを示した。中川氏は、遺産登録には推薦内容を修正する必要があるとの認識を示して「現在の内容で登録決定を得ることは極めて難しい」と語り、厳しい見通しを繰り返し示した。

 遺産登録の最終的な可否は、6月24日からバーレーンで開かれる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で決定される。環境省は委員会での審査を受けるか、審査を待たずに推薦を取り下げるかを関係省庁や地元自治体と協議し最終判断するとしている。

 勧告では、米軍北部訓練場の返還跡地が推薦地域に含まれていない点を指摘された。推薦内容を変更・追加して審議してもらうことはできず、中川氏はこの課題をクリアするためには「申請自体を修正するか、出し直す形をとらないと本委員会で判断が変わることは難しい」と説明した。

 環境省によると、推薦を取り下げた場合と、委員会審査に臨み正式に「登録延期」を決議された場合のいずれでも、今後の再申請に必要な作業手続きは変わらないという。仮に来年2月の推薦に間に合ったとしても、その後1年半の審査期間があり、最短でも登録まで2年を要する。

 ユネスコの諮問機関であるIUCNが国内の世界自然遺産の審査で「登録」以外を勧告したのは初めて。一方で、世界文化遺産では2007年、登録を目指した石見銀山(島根県)の審議で、世界遺産委員会が諮問機関の勧告した「登録延期」を覆し「登録」を決議した前例がある。

 中川氏は“逆転登録”の可能性に関し、推薦内容を変更する必要があると重ねて説明し「なかなか(勧告を)覆したお答えをいただける可能性は難しい」と述べた。