【ロサンゼルス】ウチナーンチュの宝は 「海から豚がやってきた」 著者・下嶋さん7月講演


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ドキュメンタリー作家の下嶋哲朗さんの講演実現に向けて話し合う上原民子実行委員長(前列中央)ら=4月20日、米カリフォルニア州の北米沖縄県人会館

 沖縄戦終結直後、食糧難にあえいでいた沖縄を救おうとハワイの県系人が豚550頭を贈ったことを描いた「海から豚がやってきた」の著者でドキュメンタリー作家の下嶋哲朗さん(77)が7月1日に米ロサンゼルスで講演し、同書の主人公で県系2世の比嘉太郎さんの生涯について語る。「ウチナーンチュの宝とは何か」と題して、比嘉さんの生い立ちから紹介、功績をたどる。

 ロサンゼルスのウチナー民間大使の上原民子さん(79)が中心となった準備委員会がこのほど発足し、4月20日、米カリフォルニア州の北米沖縄県人会館で初会合が開かれた。14人が出席し、講演に向け話し合った。講演は沖縄県国際交流・人材育成財団のウチナー民間大使活動促進事業助成金を活用する。

 比嘉さんは、ハワイ生まれの県系2世で、沖縄戦に米軍の通訳兵として行き、ガマで投降を呼び掛けるなど住民の命を救った。沖縄に豚を贈る運動の中心的な役割を担い活動を盛り上げ、1984年に亡くなった。「海から豚―」は、2005年にロサンゼルス近郊エルカミノ大学でミュージカルとして公演され、俳優のタムリン・トミタさんやジョージ・タケイさんらが出演し2千人以上の観客を集めた。

 下嶋さんは3月に、講演の準備のために、カリフォルニア州に住む太郎さんの長男アルビン・比嘉さんを訪ね、太郎さんの人生観を聞いたという。息子のアルビンさんによると、父はよく「ただ考えるだけでなく、実行に移すことが重要だ」と話していたという。

 下嶋さんは「太郎は自分のためではなく、他者のために人生をささげた。困った人を見過ごせない、救いの手を差し伸べるそれはウチナーンチュの心であり、宝だと思う。比嘉太郎はこれを体現した」とのメッセージを準備委に寄せた。
 (当銘貞夫通信員)