本書は沖縄国際大学2016年度うまんちゅ定例講座「しまくとぅばルネサンス」に登壇した講師らによる講座内容を書籍化したものである。「しまくとぅば」を言語学・文学・芸能・社会言語学・教育学など多方面から見つめ、13人の執筆者それぞれの観点からしまくとぅばの復興活動―しまくとぅばルネサンス―を提示している。
大学の発刊した「しまくとぅば」の書籍と聞くと、それは言語学のみで論じられたものとイメージしがちである。しかし、本書の執筆者たちは「しまくとぅば」を、本書の中で狩俣繁久氏が言う「ことばは、人類が創造したもっとも緻密で繊細で複雑な道具」として捉えていることがうかがえる。それは各章がありきたりの「しまくとぅばの現状と課題」に言及しているものではなく、常に文化的な視点が注がれている点で明らかであろう。
もちろん本書でも繰り返して琉球列島の各地域における言語差やその表記の問題、母語話者が高齢であることによるしまくとぅばの消滅など、沖縄が直面している諸問題に触れている。
しかしその一方で文学表現としてのしまくとぅばの可能性、学校教育における言語習得や言語普及の可能性、他地域における少数言語の復興事例を踏まえた「しまくとぅば言語復興」の可能性に言及しており、総合的に「しまくとぅば」を考え、未来を見据える読み物となっている。
執筆者は、各々(おのおの)の専門領域から「しまくとぅば」について考え、その「ルネサンス」はどうあるべきかを問うているのであるが、読者は本書を通じて、「しまくとぅばルネサンス」とは単に「ことばの復興」という言語を習得し、実践的に会話を行うことではなく、ことばとともにある民俗行事や文学、芸術などさまざまな文化を、同時に復興していくことを意味することが暗に語られていることに気が付くであろう。
沖縄のどの地域に住んでいる方にも手に取り、本書とともに考えていくことを望みたい。
(鈴木耕太・県立芸術大学付属研究所専任講師)
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執筆者:狩俣恵一、田場裕規、兼本敏、村上陽子、黒澤亜里子、李イニッド、仲原穣、西岡敏、中本謙、下地賀代子、大城朋子、石垣直、狩俣繁久