『産声のない天使たち』 子から受け取る貴重な気付き


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
『産声のない天使たち』深澤友紀著 朝日新聞出版・1512円

 赤ちゃんの死とは、人として最も目をそむけたくなる出来事だと言っても過言ではないでしょう。

 しかし、ひとたびそのことが、自分の身に起きてしまった時、母親はそのことに目をそむけたくてもそむけることが出来(でき)ないばかりでなく、そむけたいと思うその当たり前の感情さえも、自分を責めずにいられない程の、複雑な感情に苛(さいな)まれます。

 著者である、深澤友紀さんは、お腹(なか)の中でいのちを終えた赤ちゃんや、生まれて間もなく息を引き取った赤ちゃんのご両親、そして医療者や専門家など、多くの方々に、丁寧に取材を重ねてこの本を書かれました。

 このような体験をされたご家族の体験談に加えて、悲しい経験をされたご家族へ優しい社会であることを願って、赤ちゃんを失(な)くした方に対するグリーフケアについても紹介されています。

 子どもを失くすということは、未来を失くすことだと聞いたことがあります。タレントの風見慎吾さんは、事故で長女を失った後に授かった長男が、お腹の中で失くなってしまうという更(さら)なる悲しみを経験します。

 しかし、風見さんはこの本のインタビューの中で、「長女を失ったあの頃、ぼくたちは後ろばかりみて生きていた」、天国の長女が「『前を向いて』、と背中を押すために長男を授けてくれた」と語っています。

 産声をあげることのなかった子どもたちですが、その子どもを通して確かに何かを受け取ったご家族の、貴重な気付きを、ぜひ、多くの方に読んで頂(いただ)きたいです。

 そして、赤ちゃんの死を受け止めることができずに今も苦しんでいる方がいるなら、あなたの赤ちゃんは、あなたの胎(からだ)で生きたことによって、天国で今も生きているということに気付いて前を向いてほしいと願います。

 私はイエス様を愛するクリスチャンとして、また長男を亡くした経験から、早く天に昇った子どもたちは、家族のその後の人生を、誇らしげに天国から見守りつつ、時には家族を手助けしてくれる、そのような子どもたちであることを、実感しています。(福峯静香・看護師)

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 ふかざわ・ゆき 1978年生まれ。千葉県出身。青山学院大学卒。2001年朝日新聞の若者向け新聞の創刊に携わる。04~12年まで琉球新報の運動部や社会部などに勤務。12年朝日新聞出版に入社し、アエラ編集部で勤務。

 

産声のない天使たち
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