作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏の本紙連載「ウチナー評論」の連載10年と、琉球新報新本社ビル落成を記念した講演会「ウチナーが進むべき道―佐藤優が語る沖縄、世界、日本―」(主催・琉球新報社、特別協力・連合沖縄)が11日、沖縄県那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれた。佐藤氏は教育と琉球語の復権による沖縄のアイデンティティーの強化が構造的な沖縄差別の克服につながるとし「沖縄が知の力で自信を取り戻すことをやっていきたい」と強調した。
佐藤氏は沖縄以外の都道府県の多数決による米軍基地の押し付けや、内閣府による沖縄関係予算の一括計上方式など「沖縄人の自信を失わせる仕組みが多く組み込まれている」と指摘した。敵と味方に分ける中央の政治主義にとらわれてアイデンティティーに基づく結び付きが阻害されているとして「中央の政治から距離を置いて沖縄本位で考える必要がある。沖縄の中に分断を持ち込んではいけない。あらゆる陣営が少しずつでも勇気を出してほしい」と呼び掛けた。
また、12日の米朝会談で朝鮮戦争終結の道筋が示される可能性を取り上げ「辺野古新基地の問題と関わってくる。脅威の前提がなくなり根拠が崩れる。土砂が投入されようと、100年かけても元に戻す。暴力に訴えず、我慢することも沖縄の闘いだ」と述べた。
会場は約600席が全て埋まった。当日券を購入できず1階の大型モニターで講演を聴いた人から、琉球新報社の「りゅうちゃん子どもの希望募金」に1万6970円の寄付があった。