平和への思い後世に 大田昌秀さん一周忌 直筆原稿など展示


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一周忌を迎える12日から沖縄県立博物館・美術館で展示が始まった故大田昌秀さんの直筆原稿

 73年前の沖縄戦で鉄血勤皇隊に学徒動員された経験を背景に、沖縄県知事などを務め米軍基地問題を提起し続けた故大田昌秀さん=92歳で死去=の一周忌を迎えた12日、直筆原稿の展示が那覇市の県立博物館・美術館で始まった。基地問題解決への使命感や平和への願いが随所に感じられる。24日まで。

 公開される原稿は計約60点。本土による沖縄への差別を訴えた1967年刊行の「沖縄の民衆意識」をはじめとする著作に、新聞や雑誌への寄稿とみられるものが並ぶ。帽子などの遺品も併せて紹介する。

 「『命(ぬち)ど宝』を何よりも大事なスローガンに掲げて生きる沖縄の人々の心を平然と無視する本土政府の為政者」。2016年3月付の原稿用紙には、米軍普天間飛行場の移設に向けて名護市辺野古で15年10月に埋め立ての本体工事に着手した安倍政権を批判。沖縄戦と重ね合わせながら「戦時中の横暴な軍人と何ら異なるところはない」と指弾している。

 大田さんが晩年、理事長を務めた平和研究所の会報用とみられる原稿には「数多くの基地を抱えている沖縄にあっては、平和の創出は不可欠の課題ですが、期待通りの関心を呼ぶことができないのが残念」とつづっている。同時に「諦めるゆとりもないので精一ぱい努力している」と記してあった。

 展示を企画した同館主任学芸員の外間一先さん(50)は「23日の慰霊の日を前に、基地問題の解決や恒久平和に尽力した大田先生の功績を振り返り、沖縄の今後を考える貴重な機会にしてほしい」と話している。