成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が13日、成立した。2022年4月1日に施行されると、18歳以上であれば親の承諾をなしに消費者契約を結ぶことができるようになるなど、多方面に影響が広がる。成人年齢の引き下げに伴う意見を沖縄県内の関係者に聞いた。
昨年、県内では大学生や20代の若い世代を狙った「名義貸し」の被害により、660人以上が数十万円~百数十万円の借金を負った。今回の成人年齢引き下げに伴う法改正で、18~19歳に適用される「未成年者取消権」が喪失することを疑問視する見方もある。
沖縄弁護士会消費者問題対策特別委員長の高良祐之弁護士は「名義貸しの問題で被害者は20歳を超えても被害に遭った。未成年者が消費者被害の餌食になる事案がたくさんある中で未成年者取消権は有力な武器だったが、制限されることは問題がある」と指摘した。
県立向陽高校の上江洲由直教諭は「生徒自身も不安に感じている部分がある」と話す。一年生の政治経済の授業で取った成人年齢引き下げについてのアンケートでは、「もっと消費者教育を行ってほしい」との声が上がったという。上江洲教諭は「いままで必要だった保護者の同意が無くとも行える事項が増える」と懸念し、「契約関係などで生徒がトラブルに巻き込まれないよう授業でも積極的に、消費者教育に取り組まねばならない」と語った。
国政や地方の選挙前に候補者を招いたり、公約を読み込んだりする授業を展開してきた沖縄キリスト教学院大の玉城直美准教授は、18歳選挙権に触れ「学生たちは『若者は数として巻き込まれているだけ。社会人として若者を育てる意識も感じられず有権者として大切にされているとも思えない』と言っている」と話す。
世界的には20歳を成人年齢とする国は少数だが、「ドイツなどでは18歳で成人になる前から地方選挙などに参加させるなど社会参加の教育をする」と言う。「若者に能力はある。彼ら、彼女らを育てる教育や、若者を巻き込んだ政策が必要だ」と強調した。
成人年齢の引き下げに伴い、児童虐待防止法では18、19歳が児童養護施設で措置延長ができる規定が削除される。国は法律の条文から削除されたとしても、現状のニーズを踏まえ、措置延長を継続する方向で検討しているが、条文削除により10代後半の子どもへの支援が弱まるのではないかとの見方も上がる。
石嶺児童園の上原裕園長は「家族というバックグラウンドがない子どもたちが社会の荒波にさらされることを懸念する。大学卒業の年齢に相当する22歳まで措置延長を続けるべきだとの議論が起こっているが、法改正で議論の後退が懸念される」と語った。