「撤回」表明、7月前半か 辺野古埋め立て承認 知事判断が焦点、慎重論も


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名護市辺野古沿岸部の護岸造成現場=6月6日午後、名護市米軍キャンプ・シュワブ(小型無人機で撮影)

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設に向け、沖縄防衛局が土砂投入の開始日を8月17日と県に通知したことを受け、翁長雄志知事は土砂投入前の埋め立て承認撤回に踏み切るかどうか慎重に見極めている。早期撤回を求める声が高まる一方、今秋の知事選前に司法闘争が終わることを懸念する慎重論もくすぶる。土砂投入を止めるには、日程上、7月前半までに撤回を表明する必要がある。「環境保全措置などについて看過できない事態となれば、ちゅうちょすることなく必ず撤回する」と明言する翁長知事の最終判断に注目が集まる。

■7月前半が焦点

 撤回前に必要な事前の手続きとして、相手方となる沖縄防衛局の言い分を聞く「聴聞」がある。防衛局が応じるかどうかによっても要する期間は変わるが、約1カ月が見込まれる。土砂投入開始日とされる8月17日の前に工事を止める場合、翁長知事は7月前半に撤回を表明する公算だ。

 土砂投入による環境破壊を避ける立場から、早期撤回を求める声は大きい。早期撤回は、知事の「本気度」に疑問が生まれたり、選挙を優先しているとの批判を受けたりするなどの政治的ダメージを避けることにもつながる。

 埋め立て承認を撤回すれば、沖縄防衛局は工事を続けられなくなる。しかし、執行停止を裁判所が認めれば撤回の効力がなくなり、数週間で工事が再開できる可能性もある。国が県を相手に代執行訴訟を起こし、裁判で認められた場合は最短1、2カ月で工事は始まるともいわれる。結局、知事選前に土砂投入が始まることになり、その後に基地建設阻止で切れる「カード」がなくなるとの懸念も根強い。

■選挙も念頭

 「6月にも」と言われていた土砂投入開始が8月中旬になったことで、撤回による工事停止期間と知事選が離れすぎる早期撤回のデメリットは薄まったとの見方がある。一方で、県民投票を根拠にする選択肢が消えたことで撤回時期を遅らせる必要性が弱まり、土砂投入前の「撤回」が有力となってきた。

 県関係者の一人は「(撤回は)土砂投入前でなければならない」と話す。県内部の想定スケジュールには9月の統一地方選も組み込まれており、早期撤回で世論を喚起して選挙を有利に進める狙いもある。

 一方、別の知事周辺は「撤回は一度しかないチャンスだ。早く撤回して知事選の時にはもう意味がないということだったら(選挙を)戦えない」とけん制する。「撤回の勢いで知事選を勝利し、2期目に入った後で県民投票で民意を示して最高裁にメッセージを送るという流れがベストだ」と見据えた。

 土砂投入の前後で想定されるメリット・デメリットを「中和」させて撤回の効果を高める戦略として、知事選前倒し説もあるが、県幹部は一様にそれを否定する。

 撤回後には国が対抗措置として代執行訴訟を起こすとみられ、国は損害賠償訴訟もちらつかせる。小野寺五典防衛相は15日、会見で撤回への対応について「普天間(飛行場)の一日も早い返還・負担軽減のために(名護市)辺野古への移設は重要だ。その姿勢は変わらない」と答えた。 (島袋良太、明真南斗、當山幸都)