知事選対応で論戦 与党「県民が期待」、野党「健康に不安」 6月県議会


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島袋大氏(沖縄・自民)の質問に答弁する翁長雄志知事=19日午前、那覇市の県議会

 沖縄県の翁長雄志知事が膵臓(すいぞう)がんの手術後初となる県議会6月定例会の答弁に臨み、秋に迫る知事選への対応を巡って注目の論戦が始まった。「多くの県民から期待が大きい」と2期目出馬に向けてエールを送った与党会派に対し、野党の自民は「健康に深刻な不安が出てきた」とけん制。翁長知事は進退について明言せず追及をかわしたが、再質問への答弁は副知事らに任せるなど、体調が万全とはいえない面ものぞかせた。任期満了まで半年を切る中、与野党とも知事選候補が定まらない状況が続いてる。

 「本会議に出席したからには野党として厳しく対応する」。代表質問の先陣を切った島袋大県議(沖縄・自民)が翁長知事に迫った。今定例会は翁長知事の3年半の県政運営の総括や知事選出馬をはじめ、最大の公約である辺野古新基地建設阻止を巡って、沖縄防衛局が8月17日にも海域に土砂を投入すると県に通知したことで埋め立て承認「撤回」の判断が焦点となるなど、1期目の集大成ともいえる論戦に注目が集まっている。

 ただ、翁長知事は退院して以降、登庁を週1回程度に控え、抗がん治療を続けている。当初は難しいとの見方もされていた6月定例会への出席に当たり、体調による途中離席や本会議欠席、治療に伴う帽子の着用を議会に求めた。議場で島袋氏が「治療中の知事にこれまで通り議論を迫ることで、県民に批判を受けるかもしれない。(出席に)条件を付けなければならないなら、療養に専念した方が議会への配慮ではないか」とただしたのに対し、翁長知事は「議会において県政運営について説明を行うことは、知事の重要な務めだ」と応じた。

 一方で、事前に通告された質問には答弁書を読み上げたものの、再質問への答弁を慌ただしく調整する執行部を尻目に、知事自身はこの日、再答弁に立つことはなかった。代表質問終了後、野党県議の一人は「答弁する回数も少ない。知事はやはり治療に専念すべきだ」と強調した。

 野党とは打って変わって与党を代表して大城一馬県議(社民・社大・結)は「術後の回復も順調で、県政運営において気力も充実していると思う。知事選への出馬の決意をうかがう」と立候補表明を促した。しかし、翁長知事は自民への答弁と同様、明言を避けた。それでも大城氏は「辺野古の埋め立て承認を撤回すると明言した。辺野古の新基地建設阻止にみじんの揺るぎもないと明確にした」と手応えを感じた様子だった。 (与那嶺松一郎、吉田健一)