南洋墓参、来年最後に 群島帰還者会 高齢化で継続断念


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霊石の入った白木の箱を手に帰沖した第1回南洋墓参団 =1968年6月7日、那覇空港

 南洋群島の帰還者でつくる「南洋群島帰還者会」がサイパン、テニアンで1968年から実施している「南洋群島・慰霊と交流の旅」(南洋群島墓参団)が来年で終えることが22日、明らかとなった。会員の高齢化などによって現地を訪れることが困難になったことが要因。来年5月を予定している50回目の訪問を節目に、墓参団の歴史に幕が下りる。すでに沖縄県などには通達しており、23日の総会で会員に報告する。

 48年に結成した南洋群島帰還者会は、68年に戦後初めて墓参団としてサイパン島とテニアン島を訪問。現地に慰霊のための「おきなわの塔」を建立し、以来亡くなった県人を慰霊してきた。太平洋戦争で犠牲になった人々の「三十三回忌」となる76年には1100人が参加した。だが、近年は参加者が減り、会の事務局によると、今年の参加者は22人だった。

 同会は23日午後、那覇市識名の南洋群島沖縄県人戦没者慰霊碑で慰霊祭を開く予定で、墓参団が終了しても慰霊祭は続けていく考え。22日、慰霊祭の準備のために碑を訪れた同会事務局長の安里嗣淳さん(73)は「多くの人に参加してほしい」と、最後の墓参団への参加を呼び掛けている。

 安里さんはテニアンの収容所で生まれて現地での生活の記憶はないが、当時7歳の兄、4歳の姉は戦争で亡くなった。墓参団で何度かテニアンを訪れ、当時の屋敷の跡を父親と探したこともあったという。「兄や姉の遺骨が持ち帰れずに、両親は小さな石ころだけを持ち帰ってきた。昨年、今年は行けなかったので最後に訪問したい」と語った。

 50回目の墓参団は2019年5月下旬を予定しており、同会は今後、幅広く参加者を募っていく考えだ。会や墓参についての問い合わせは(電話)090(4352)3290(安里事務局長)