〈解説〉翁長雄志知事平和宣言 承認撤回へ強い意思


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設で国が8月17日にも埋め立て土砂を投入する計画を明らかにする中で迎えた慰霊の日に、翁長雄志知事は平和宣言で新基地建設阻止の決意を改めて示した。その際、緊張緩和へ変化し始めた東アジアの安全保障環境という観点からも新基地の建設に異議を唱えた。普天間飛行場の県内移設に反対する多数の民意に加え、朝鮮半島情勢を巡る対話の流れに乗り遅れている日本政府の対応も批判した。

 その上で、前知事時代に県が認めた埋め立て承認の「撤回」についてより強い実行の意思を内外に打ち出した。

 翁長知事が平和宣言で辺野古移設問題に言及するのは知事就任以来4年連続。膵臓(すいぞう)がん手術の直後で治療を続けている体調をおして追悼式に出席した。県民にメッセージを送るだけでなく、沖縄の基地問題を国民全体の問題として全国に発信することにもこだわりが強かったとみられる。

 辺野古新基地建設は「沖縄の基地負担軽減に逆行しているばかりでなく、アジアの緊張緩和の流れにも逆行している」との主張を初めて打ち出すなど、朝鮮半島の非核化や平和体制の構築という方向性を示した米朝首脳会談の共同声明に期待を表明したのも特徴だ。

 また「かつて沖縄はアジアの国々との交易や歴史を通し、平和的共存共栄の時代を歩んできた歴史がある」とも述べた。アジアと日本の懸け橋としての沖縄の役割にも発言の比重を置き、東アジア地域の発展に貢献し平和を築くことが沖縄の基地負担軽減にもつながることも強調した。

 しかし、外交や安全保障政策の見直しを知事に迫られた安倍晋三首相は、辺野古移設を進める方針を改めて強調するなど、翁長県政との認識の溝が際立つ形となった。

 安倍政権は北朝鮮情勢が緊張緩和に向かっても、強硬姿勢を崩していない。国が埋め立てを強行する8月に向けた翁長県政の対抗措置が焦点となっている。 (与那嶺松一郎)