『宮古の自然と文化 第4集 天・地・人の調和』 島々への思い凝縮


社会
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『宮古の自然と文化 第4集 天・地・人の調和』宮古の自然と文化を考える会編 新星出版・1800円

 結成20周年を迎えた「宮古の自然と文化を考える会」が、講演論文集第4集を刊行した。同会は年に3回、宮古島の自然と文化をテーマにした講演会を催し、一般に公開している。

 さらに、学者・研究者による講演を聴かせっ放しにせず講演の中身を濃縮して論文集を刊行している。第4集も既刊の三つの論文集と構成を同じくして、第1部「自然」分野、第2部「文化」分野として6人ずつ、計12人の学者、研究者、会員が執筆している。

 幾つか大まかに紹介したい。「宮古島の地震と過去の巨大津波」(中村衛)では、南大東島と宮古島との地震の揺れの違い、古記録による津波の高さの推定、1771年の明和の大津波などが図表や地図も添えて解説されている。私が特に興味深く読んだのは明和の大津波であった。私の生まり里、砂川(うるか)は海岸沿いに在ったため明和の大津波で全滅したと伝えられているためであった。今は内陸部に移動されているが、毎年旧暦3月の初酉(とり)の日には村ではナーパイ(津波除け)の神事が行われている。

 「素潜り漁師の民俗知識と漁撈(ぎょろう)活動」(高橋そよ)は圧巻だ。漁船に乗り込んで漁師たちの漁場まわり漁法を自分の目と身体で確かめて書き綴(つづ)った「参与観察日誌」は若い女性の筆法とは思えぬほどの迫力だ。さらに、佐良浜での魚の呼び名(200種以上)を表にしてプレゼントしてある。佐良浜出身の方々は一読してほしい。

 エッセイでは「宮古三題」(仲程昌徳)がユニーク。大正、昭和初期の新聞記事から宮古島にまつわる習俗(みんな島の入れ墨)や清村泉水の詩、インドネシアの墓守など人物エピソード。「バッシライン」(久貝愛子)は過酷な戦時中の青春、バラ色の30代を優しく語り、「言葉邂逅(かいこう)」(渡久山章)ではなつかしい島方言(すまふつ)にほほえみ、「人の出会いは天の力となる」(垣花豊順)では精神を鼓舞する論調に深く頷(うなず)いた。

 (宮里尚安・沖縄エッセイスト・クラブ会員)

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 宮古の自然と文化を考える会 宮古の自然や島の人々が築いた歴史・文化について知見を深めることを目的に1995年、沖縄本島在住の宮古出身者を中心に結成された。宮古の自然・歴史・文化を統一的に捉え、調査・研究をしている。

 

宮古の自然と文化を考える会 編
A5判 239頁

¥1,667(税抜き)