県内芸術家102人を活写


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「創造する魂」

 【東京】1960年代から米国で写真を撮り始め、矢沢永吉や緒方拳ら著名人のポートレートでも知られる写真家の長濱治さん(77)がこのほど、沖縄の若いアーティストら102人を活写した写真集「創造する魂 沖縄ギラギラ琉球キラキラ100+2」(ワイズ出版)を発刊した。

 多摩美術大学時代の同級生だった美術家の真喜志勉さんの提案で撮り始めたが、真喜志さんは完成を見ずに他界。長濱さんは「真喜志へのレクイエム(鎮魂歌)のようなもの。沖縄の人たちは愛すべき人たちでほれる。やっぱり好きなんだな」と語った。

 写真集は、真喜志さんに始まり、ミュージシャンや石彫家、カフェ経営者など、多方面にわたって老若男女のクリエーターら102人を紹介している。長濱さんは、かつて藤井フミヤや小泉今日子ら東京で100人を撮った写真集「THE TOKYO HUNDREDS 原宿の肖像」を出しており、その沖縄版とも言える作品となっている。

写真家の長濱治さん(右)と写真集アートディレクターの志喜屋徹さん=10日、東京都内のオフィス

 長濱さんは名古屋市生まれで、沖縄とのつながりはない。疎開先の愛知県小牧市で見た駐留軍に強烈な印象を受け、ジャズやブルースにはまっていった。1960年代に米国に渡りバイカー集団「ヘルズ・エンジェルス」に密着し、ブルースミュージシャンなど米国の深層を撮り続けてきた。

 多摩美大時代に知り合った真喜志さんに誘われ、1967年に初めて沖縄に渡り、撮影に取り組んだ。日本復帰の72年に沖縄の写真集「暑く長い夜の島」を出した。

 長濱さんは「真喜志からの、沖縄の創造する若いやつは面白いぞという言葉が頭に残っている。真喜志に良い物作るぜと、とにかく思いを込めて作った」と制作に込めた思いを語った。「沖縄を見ていると、北海道から九州の人は感じていない日本が投影されている。日米地位協定を見ても日本は独立していない。植民地だ」と語る。

 写真集の中には、復帰前に沖縄で撮った米兵と沖縄の人たちの姿も差し込んでいる。発行日は慰霊の日。写真集の装丁などを担当したアートディレクターの志喜屋徹(あきら)さん(49)は「写真の隙間に長濱さんの思いを入れたかった。奥さんのおじさんが島田叡元知事で、慰霊塔の写真も差し込んだ。基地を巡って憧れや憎しみなどアンビバレント(相反する感情が同居する)な感じを出した」と意図を説明している。 (滝本匠)