中央最低賃金審議会の小委員会が示した2018年度の地域別最低賃金の目安額からは、沖縄と東京との賃金格差が改めて浮き彫りとなった。10月からの最低賃金の参考となることから、労働者側や、労働や貧困問題に詳しい弁護士からは目安額よりも引き上げるべきだとの意見が上がる。一方、中小零細企業が多く外的要因に左右されやすい観光産業が主軸となっている県経済界からは、賃金の引き上げを困難視する声が出た。
厚労省によると、地域別最低賃金は(1)労働者が暮らすのに必要な生活費(生計費)(2)労働者の賃金(3)事業者の賃金支払い能力―などを勘案して定めるとされる。
沖縄では、県民所得や労働生産性の低さが最低賃金が低く抑えられている要因とみられる。
県中小企業団体中央会の上里芳弘専務理事は、沖縄と東京の賃金格差の背景に企業の収益性の差があると指摘する。県内は観光業を中心に好景気が続いているが、9割以上を中小企業が占めており「急に給与を上げると企業の経営が難しくなる」と強調する。
人手不足も深刻化していることから「給与を上げなければ従業員を採用できない状況だが、給与を上げたら経営が苦しくなる。経営者にとって厳しい環境だ」と語り、ジレンマを抱える。
一方、労働組合などからは目安額よりも上積みが必要だとの声が上がった。最低賃金を正式に決める「沖縄地方最低賃金審議会」に出席する県内最大の労働団体の連合沖縄は、本紙取材に「目安をもとに、上積みを図っていく」と語り、審議会で上積みを求める考えを示した。
沖縄弁護士会貧困問題対策特別委員会委員長の大井琢弁護士も「沖縄は貧困率、ワーキングプア率共にトップだ。最低賃金の差が縮まらないと貧困の改善につながらない。より問題を悪化させる要因になる」と指摘。賃金が引き上げられない事情として産業構造の弱さが挙がっていることには「根本的に考え方を変えることが求められる。沖縄は物価も決して安くない。貧困の固定化を招き、教育や福祉にもひずみを招くことになる」と警鐘を鳴らした。