【島人の目】ニラツナ・パスタ


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 日本にある一般的な野菜の中でイタリアにはないもののひとつがニラである。僕はニラが好きなので仕方なく自分で育てることにした。

 わが家はミラノ郊外のブドウ園に囲まれた田舎にあるので、菜園用の土地には事欠かない。日本に帰った際にニラの種を買って戻り、指定された時期にそれを菜園にまいた。が、種は一切芽を出さなかった。

 イタリアは日本よりも寒い国だから、と時期をずらしたりして試したが、やはり駄目だった。10年以上も前のことである。いろいろ勉強してプランターで苗を育てるのはどうだろうかと気付いた。

 次の帰国の際に沖縄からニラ苗を持ち込んでプランターに植えた。今度はかなり育った。かなりというのは日本ほど大きくは育たないからである。成長すれば30~40センチはある、立派なニラの苗だったのだが、ここではせいぜい15~20センチ程度しかなく茎周りも細い。でも野菜炒めやニラ玉を作るには何の支障もない。

 そればかりではない。ニラはニンニク代わりにも使える。特にパスタ料理には重宝する。わが家ではツナ・スパゲティをよく作るが、そこではニンニクを使わずニラをみじん切りにして加える。ニンニクほど匂わずしかもニンニクに近い風味が出る。

 またニンニクとオリーブ油で作る有名なスパゲティ「アーリオ・オーリオ」にニラをみじん切りにして加えると、味が高まるばかりではなく、ニラの緑色が具にからまって映えて、彩りがとても良くなる。

 見た目が美しいとさらに味が良くなるのは人間心理の常だから、一石二鳥である。
 (仲宗根雅則 イタリア在、TVディレクター)