競技空手で数々の入賞歴を持ち、さらに伝統的な沖縄空手に魅了された空手家が空手専門の旅行会社を設立した。「Ageshio Japan」(アゲシオジャパン、那覇市)の上田健次郎社長(46)だ。「本物の沖縄空手を見てもらいたい」と、海外から訪れる空手家に、県内道場での稽古や沖縄観光を組み合わせた旅行メニューを提供する。
上田社長は、空手で国体に9回出場し、糸東流の全国大会で優勝した。ナショナルチームの指導のため移住したオーストラリアでは、全豪トーナメントで優勝したほか、会社を立ち上げて旅行事業を展開した。だが、競技空手が主流の海外にあって、「伝統空手を学びたくなった」と昨年、沖縄に移住した。
沖縄空手の旅行メニューでは、参加者の流派や熟練度を把握した上で、複数の道場で沖縄空手を体験できる日程が、外国人のニーズに合うと好評だ。道場も収益を得る仕組みにも気を配る。県内には経営が厳しい道場も多く、空手家も高齢化している。上田社長は「ボランティアでは後継者が育たない。普及に取り組み、技術を磨く練習をもっとできる時間が必要だ」と専業で道場経営できる環境をイメージする。
東京五輪で正式種目となった競技空手が盛り上がる半面、伝統の沖縄空手の今後を懸念する。「まだまだ沖縄空手は知名度が低い。沖縄に外国人をたくさん招き、道場にも収益が落ちる仕組みをつくりたい」。空手の聖地・沖縄に世界中から愛好家を呼び込めるように事業展開を進める考えだ。