「空手は困難を乗り越えるためにある」。事故で片脚を失うというハンディを抱えながら、第1回沖縄空手国際大会に出場した空手家がいる。ブラジル人のジョナス・アマラウ・デ・フレイタスさん(25)=重礼館フラビオ道場。2日、予選で切れのある演武を披露したアマラウさんは「情熱があれば何でもできる。夢がかなった」と充実感たっぷりに話した。
9年前、地元で銃撃に巻き込まれ、2発が腕と左脚に命中。左脚のももから下を切断した。絶望感から自宅に引きこもった。2011年ごろ、友人の勧めでスポーツクラブに通い、ブラジリアン柔術と出合った。テコンドーにも挑戦したが、「空手が一番合っていた」。空手一筋となった。
週4日、サンパウロ市にある道場で鍛錬し、右脚1本でもぶれない体幹を身に付けた。めきめき実力を付け、南米大会で準優勝するほどに成長。空手発祥の地で、「夢だった」沖縄を初めて訪れた。
2日午後、那覇市の県立武道館。首里・泊手系の予選でアマラウさんの順番となった。松葉づえを置き、飛び跳ねて競技へ向かう。ビュッ。シュッ。胴着がうなり、鋭い拳が空気を切り裂く。演武終了。割れんばかりの拍手が起こり、しばらく続いた。
「予選通過はできなかったけど、悔いはない。忘れられない経験になった」とアマラウさん。「空手のおかげで自信を取り戻すことができた。もっと成長して、沖縄に戻ってきたい」と笑顔を見せた。