【島人の目】戦艦ウィスコンシン


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 世界最大の海軍基地があるバージニア州ノーフォーク市。観光の目玉の一つである海洋科学センターのノーティカス海事博物館は、海や米海軍の歴史のすべてが網羅されている。退役した戦艦ウィスコンシンも永久保存され展示されており、多くの見物客が訪れ、人気だ。全長270メートル、幅33メートルの巨大戦艦ウィスコンシンは、16インチの砲弾が出る大砲が前方に6門、後方に3門あり、射程は37キロに及ぶ。第2次世界大戦で沖縄の地形が変わるほど、艦砲射撃を浴びせ、焦土化させた後、日本本土に向け終戦の2日前まで運用された。朝鮮戦争、湾岸戦争でも就役しながら、ほとんど無傷だったようだ。

 乗艦してみると、巨大な砲塔が目に入ってくる。乗組員約2500人が乗り込んだだけあって、その大きさに圧倒される。甲板は、板床で昭和20年代のレトロな雰囲気だ。各所には乗組員だった退役軍人がボランティアガイドとして配置され、三連装の大砲を備えた巨大なその雄姿を誇るように、堂々とした語り口で説明する。ウィスコンシンを紹介したビデオも見たが、沖縄、日本本土を攻撃した模様や兵士たちの証言などがあり、艦砲射撃で敵国を木っ端みじんにしたのを偉業としてたたえている内容だった。

 展示物の中にある沖縄の地図が目に留まった。艦砲射撃で沖縄を攻撃した日付が記載され、島の上には爆弾が爆発した絵が描かれ、黒く塗りつぶされた星印もある。おそらくそれは沖縄を完全に占領したことを示す烙印(らくいん)であろう。

 海軍の歴史展示物なども見学したが、逐一、海軍は立派であり数々の功績を残し誇れるものだとするプロパガンダ的で、戦争勝利国の傲慢(ごうまん)さが垣間見える。そこには、戦争の残忍さや平和の尊さについては触れられていない。このようなコンセプトによって「戦争万歳」につながらないか、見学に来ている子どもたちの反応が気になった。
 (鈴木多美子バージニア通信員)