アルパカ血液から抗体  琉大ベンチャー 感染症対策活用へ


この記事を書いた人 Avatar photo 高良 利香
アルパカの血液を使って抗体を作成するRePHAGENの村上明一社長=2日、沖縄県西原町の琉球大学

 琉球大学大学院医学研究科の村上明一助教は、ラクダ科のアルパカの血液を使って、200億種類を超える熱に強い抗体を短期間で製造できる技術を開発した。今年4月に琉大発ベンチャー企業「RePHAGEN」(リファージェン、西原町)を立ち上げており、抗体を使った産業化を目指している。抗体をセンサーとして機械に搭載すれば、空港などで感染症の原因になる病原体を判別できるとみられ、4年以内の完成を目指して装置の開発を進めている。

 村上氏が開発したのは「高性能VHH抗体の迅速開発技術」。抗体は、体内に入ったウイルスや病原体(抗原)に反応して、免疫のもとになる物質。一般的な抗体はL鎖とH鎖で構成されるが、H鎖のみで構成する特殊な抗体を持つラクダ科に注目した。ラクダ科の抗体は安定した性質を持ち、ヒトの抗体と構造が近く治療に使いやすい特徴があり、血液を入手しやすいアルパカで抗体を開発した。

 一般的な抗体作成は、動物に病原体を複数回注射して免疫を作るなど3カ月以上の作業がある。村上氏の技術ではアルパカの血液からVHH抗体を得て、遺伝子を操作して試験管の中で新たな遺伝子を生み出して多様性をつくり、性能を高くする。これを大腸菌に乗せて、大量に増殖させることで、低コストで抗体を作成する。

 100度の熱にも耐えられる安定性があり、インフルエンザやエボラウイルスなど標的にする病原体に結合する抗体を10日以内の短期間で製造することができるという。

 これまでは病原体ごとに動物の免疫を利用して抗体を作っていたが、試験管内進化や遺伝子操作の方法で期間を短縮した。

 村上氏は「200億以上の種類の多様な抗体があるので、何かしら抗原(病原体)と結合する。どんな抗体でも対処できる」と自信を見せる。感染症対策の機械のほか、既存の抗体製品のコスト低減や高性能化など、幅広い事業活用を見込んでいる。