世界の空手家呼び込め 注目、武道ツーリズム 経済効果期待も課題多く


この記事を書いた人 大森 茂夫
世界各地から集まった空手家が県内の指導者から稽古を受けた沖縄空手国際大会のセミナー=7日、豊見城市の沖縄空手会館

 世界中の空手家を県内に迎え入れて稽古などを提供する「武道ツーリズム」が、沖縄の新たな観光コンテンツとして注目されている。世界の空手家や愛好家は約1億3千万人と言われており、発祥の地である沖縄に呼び込むことで大きな経済効果が期待できる。県も空手家の誘致に力を入れており、空手家専門の旅行会社も設立されるなど武道ツーリズムを巡る動きが活発となっている。

 今月1日から7日まで開催された第1回沖縄空手国際大会には40の国と地域から約1100人が出場した。選手やスタッフなども含めた来場者数は約2万6千人に上った。米国やドイツ、フランスなど欧米各国のほか、アルゼンチン、中国、南アフリカなど世界各国の空手家が沖縄を訪れた。県空手振興課の担当者は「出場選手だけではなく、同じ道場の仲間や家族など10~20人単位で来沖するケースが見られた」と説明する。海外の空手家を県内に呼び込むため、今後も県は施策を進める方針という。

 ■世界中にマーケット

 稽古のため沖縄を訪れた空手家は、通常の観光より長期間、滞在することも明らかになっている。2016年度に県が実施した調査では、稽古で沖縄に来た空手家の平均滞在日数は9日間だった。同年度に沖縄を訪れた観光客の平均滞在日数3・71日を大きく上回る。今月21日、空手道ネパール代表の表敬訪問を受けた嘉手苅孝夫文化観光スポーツ部長は「沖縄観光の経済効果を上げるためには滞在日数を伸ばすことが大事になる。現在の観光客に空手家が加わることで経済効果も高まる」との見方を示した。武道ツーリズムに大きな可能性があることにも触れて「世界中にマーケットがある」と強調した。

 しかし課題は多い。県がことし策定した「沖縄空手振興ビジョン」は、現状としてまだまだ発祥の地として認知度が低いことや、空手の価値が経済的に確立されていないことなどを指摘する。

 ■道場の魅力発信

 海外での指導経験もある、沖縄空手・古武道連盟の金城常雄副理事長は「沖縄には素晴らしい空手家の先生がたくさんいて、海外からの注目度も高い」と感じている。以前は空手と言えば東京をイメージする外国人が多かったが、「インターネットの普及により沖縄が発祥地という認識が広まってきている」と語る。

 空手家専門の旅行会社アゲシオジャパン(那覇市、上田健次郎社長)も事業を開始しており、県内での稽古を要望している外国人を受け入れている。稽古に関する問い合わせは欧米やアフリカ、中東など世界各地から来ており、上田社長は「沖縄の武道ツーリズムはもっと伸びていくだろう」と実感する。

 一方で上田社長は「多彩な魅力や特徴がある県内道場の情報を十分に発信できていない」と言い、現在の武道ツーリズムに改善の余地があると考えている。海外の空手家は、地域の道場に伝わる空手の習得を求めるケースが多いという。上田社長は「今後は道場の魅力や指導する先生の技を分かりやすく伝える努力が必要になる」と指摘。「沖縄は空手の聖地なので数十万から100万人の空手家を誘致できる可能性も秘めている」と力を込めた。(平安太一)