第18回ジャカルタ・アジア大会の重量挙げ男子62キロ級で5位に終わったリオ五輪日本代表の糸数陽一(豊見城高―日本大、警視庁)。春から続く腰の痛みは6、7割回復しており、アジア大会の記録も現時点ではまずまずの結果と受け止める。「東京五輪あとのことは考えていない」と、2020年へ照準を絞り、「皆の喜ぶ顔のために、自分のベストを尽くしたい」と決意は固い。11月の世界選手権では今までの62キロ級から61キロ級に変わり、新たな挑戦も待ち受ける。国体や世界選手権などを前に沖縄県内で調整する糸数に話を聞いた。 (聞き手 嘉陽拓也)
―春から腰の痛みがあり、5月の全日本選手権は5連覇が懸かる中で2位、8月のアジア大会は5位だった。
「春に腰が張る感覚から、ピキッと痛みがきた。大きなけがをした経験がないため、最初は受け入れ難かったが、逆に考えると東京五輪前の今で良かった。考える時間もできて、少ない時間で質の高い練習を考えてやれるようになった」
「今は腰の調子も6、7割戻っている。その状況で出場したアジア大会の5位は満足の結果。5月が最も腰が痛く、同選手権は出場できるか分からなかった」
―10月に国体、11月には世界選手権がある。どう調子を上げていくか。
「国体は減量もないのでもっと上の重量でできる。回復の兆しも実感している。世界選手権では今までの62キロ級から61キロ級に変わる。そこが難しい」
―その1キロの差はどれだけ繊細か。新しい挑戦は。
「未知の世界。1キロ減らすとへたしたら挙げる重量が5~10キロ落ちる。体脂肪が5・8%とかの体から搾るのは難しいが、要らないものを削って体をつくる」
「アジア大会後、ランニングで代謝を上げ、栄養学を勉強し始めた」
―国際大会を多く経験してきたが、東京五輪は別格か。
「そう思う。でも想像し過ぎて、本番はそれと違ってパフォーマンスできなかったら嫌なので、自分を信じるだけ。応援をパワーに変えていく」
―東京とメキシコの五輪の重量挙げ金メダリスト、三宅義信氏からも指導を仰いでいるが、三宅氏と東京五輪へどう取り組んでいるか。
「義信さんには週3回は連絡している。いまだに飽くなき探究心が強く尊敬しています。『この練習ではまだまだ足りない。金メダルどころか入賞で精いっぱいだ』と言ってくれる。結果を出すと、厳しい言葉を掛けてくれる人が減ってくるので。義信さんは結果もキャリアもあり、常にいろんな世界が見えている。勉強させられっ放しです」
―東京五輪以降のことは考えていないと言うが。
「何歳になっても重量挙げは好きで、挑戦していきたいが、そんな気持ちだと全力になれず、甘えが出る。あと2年のウエート人生を精いっぱいやるという気持ち。東京五輪までそれ以外は考えたくない」
―東京五輪へ向け、何かを背負う意識もあるのか。
「自分のためだけなら正直、今の記録でもいい。ただ、皆に良い報告して、喜ぶ顔が見たい。それが今より先に進む一歩になる。だからこそ、誰にも負けないことが大事だと思う」
―東京まで自己記録をどう更新したいか。
「62キロ級で出したトータル302キロを、61キロ級で越えればメダルは付いてくる。金メダルのみに執着すると足元がすくわれる。最高のパフォーマンスで恩返しするため、6回の試技を完璧に成功させ、最大限の力を発揮していく」