30日投開票の第13回沖縄県知事選が13日告示される。選挙戦は、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=と、県政与党が推す衆院議員の玉城デニー氏(58)による事実上の一騎打ちとなる。両氏はこれまで公開討論会や事務所開きなどを通して政策を訴え、前哨戦を繰り広げてきた。両陣営の支持拡大の取り組みは告示と同時に一気に加速する。両陣営の幹部に選挙戦の意義や活動、目標などを聞いたほか、両氏の主張や焦点、情勢などをまとめた。(’18知事選取材班)
【焦点】新基地建設に影響/辺野古、普天間新局面へ
辺野古新基地建設阻止は、8月に死去した翁長雄志知事が県政運営の柱に掲げていた。今回の知事選により、新基地建設問題は新たな局面を迎える。一方、政府は選挙結果にかかわらず、新基地建設を推進する構えを見せているが、知事選の結果次第では、基地建設の行方に影響を与えるのは必至だ。
新基地建設について、佐喜真淳氏は「原点は『世界一危険』とも言われている普天間飛行場の危険性の除去」として、明確な態度を明らかにしていない。一方、翁長県政の継承を掲げる玉城デニー氏は「辺野古に新たに基地は造らせない」と主張している。
佐喜真氏は「県が埋め立て承認を撤回した。政府と県の法廷闘争も考えられ、法的にどうなるかを注視する」と述べるにとどめ、知事選の歴代候補者としては初めて辺野古移設に対する評価を避けている。
これに対し玉城氏は佐喜真氏と同様に「普天間飛行場の危険性を放置せず、閉鎖、返還を一日も早く実現するよう政府に強く要求する」としている。承認撤回を支持し「新たな県政でしっかりと引き継いでいく覚悟だ」と述べている。
沖縄の基地負担の象徴となっている普天間飛行場の返還手法について、佐喜真氏は「政府と対等な立場に立ち、必ず実現する」とした。玉城氏は「奪われた土地だ。ぶれずにしっかり政府に即時返還を求めていきたい」とした。
【情勢】佐喜真氏 自公維で挙党態勢/玉城氏 党派色薄め浸透へ
今回の知事選は、保守勢力が分裂した4年前の知事選と同様に従来の保革の対立構造とは様相が異なる。佐喜真淳氏を推薦する自民、公明、維新は党幹部らが続々と沖縄入りするなど、挙党態勢で選挙戦に臨んでいる。対する玉城デニー氏を支援する国政野党は党派色を薄めるため、幹部の沖縄入りを極力抑えた形で選挙戦に臨むなど対照的な選挙戦が展開されている。いずれの陣営も従来の支持層を超えた浸透を図っている。
直近の全県選挙だった2017年10月の衆院選は、保守地盤とされる4区を除き、翁長雄志知事を支える県政与党の候補者が勝利した。14年12月の衆院選、16年の県議選や参院選と、翁長県政が誕生した14年以降に行われた全県選挙では、保革を超えた枠組みの「オール沖縄」勢が強さを発揮している。
一方、票田となる市部の市長選結果を見ると、16年1月の宜野湾市長選で自民、公明が推す佐喜真氏が勝利した。今年に入っては、1月の南城市長選を除き、2月の名護市長選、3月の石垣市長選、4月の沖縄市長選はいずれも、自民、公明、維新が推す候補者が当選している。「自公維」の枠組みで全県選挙に臨むのは今回の知事選が初めてとなる。
前宜野湾市長として2区に地盤を持つ佐喜真氏と衆院議員として沖縄3区を地盤にする玉城氏は告示日以降は、県内最大の大票田である那覇市を中心に遊説などを繰り広げる。過去の県知事選では、那覇市で勝利した候補者が知事選を制しており、今回も那覇市の勝敗が鍵を握る。両陣営とも10月21日投開票の那覇市長選とのセット戦術を展開しており、無党派層への浸透がポイントとなる。