宜野湾市長選 宜野湾市の課題点検


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 沖縄県知事選出馬のため、前市長の佐喜真淳氏が辞職したことに伴う宜野湾市長選は、23日に告示、30日に投開票される。市長選には、前市副市長の松川正則氏(64)と県高校PTA連合会前会長の仲西春雅氏(57)が出馬を表明し、同日選となる県知事選とのセット戦術などで前哨戦を展開している。米軍普天間飛行場の移設・返還問題や待機児童、市街地活性化など、市の課題をまとめた。
 (宜野湾市長選取材班)

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<普天間飛行場>返還合意22年、動かず/騒音、落下物被害は深刻

住宅地上空を頻繁に飛び交う垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ=宜野湾市の米軍普天間飛行場

 市の中心に位置する米軍普天間飛行場。日米両政府が全面返還を合意してから今年で22年が経過したが、約480ヘクタールの広大な飛行場は今も市の面積の約4分の1を占める。近年は事故が頻発し、騒音被害も夜間を中心に激化の一途をたどる。

 2004年8月には米海兵隊のヘリが沖縄国際大学に墜落。近年では16年12月に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが名護市安部に墜落したほか、17年12月には緑ヶ丘保育園と普天間第二小に米軍機の部品が落下した。その他にも、県内外で不時着や墜落事故が相次ぐ。

 騒音被害も深刻だ。17年度に市に寄せられた米軍機騒音に関する苦情件数は過去最多の432件に達し、本年度は今月10日時点で既に285件と「前年度を上回るペース」(市基地渉外課)で推移する。中でも夜間の騒音に関する苦情が多い。日米が合意した航空機騒音規制措置では午後10時以降の飛行は制限されるが、形骸化している。

 19年2月には、日本政府が県に約束した「5年以内の運用停止」の期限を迎える。しかし県が辺野古移設に対し反対姿勢を示している中、政府は「辺野古移設への県の協力が前提」との立場に転換し、運用停止へ向けた兆しはない。米軍も今年1月、滑走路の改修を終えた。

 歴代市長が求め続けてきた危険性の除去や負担軽減は、今も道筋すら見えないのが現状だ。

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<待機児童>解消へ施設整備急務

学童の待機児童の多さを知り、一般社団法人「アスリート工房」が開所した学童クラブ=12日、宜野湾市大謝名

 国勢調査によると2015年10月時点の市の人口は9万6243人、世帯数は3万9333世帯で、人口は前回調査の10年より4・7%増となっている。再開発や区画整理で子育て世代の流入も増える中、保育所や小学生を放課後に預かる放課後児童クラブ(学童クラブ)の需要も増えている。

 15年4月時点の市内待機児童数は350人と県内で2番目に多かった。市の支援計画に基づき15~17年度に15施設、827人分の受け皿を整備し、18年4月時点で待機児童を99人にまで減らした。市担当者は本年度中の施設整備で一定程度の解消を見込むが「ニーズが日々変わる。受け皿の拡充も進むが、その分希望者も増えるため状況を随時確認しながら解消に努めたい」と説明する。

 女性の社会進出や核家族世帯の増加に伴い、学童クラブの需要も増えている。統一の調査基準がないため正確な数字は把握できないが、入所希望者で学童に入れなかった児童数は2017年5月時点で212人と県内最多だったが、18年5月までに99人まで減った。

 市内には現在、民間と公設の計44クラブ、1667人分の受け皿がある。だが、実際の施設利用者数は1449人。通学する学校の学区内でなかったり、利用料の違いなどから利用者ニーズとのミスマッチが生まれている。市の担当者は「各地域で需要も状況も異なるため、ニーズが読みづらい部分もある」と語った。

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<西普天間地区>注目集まる開発手法

 市北部にある約51ヘクタールの米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区跡地は、2015年3月に返還され、今年3月に地権者に引き渡された。

 市などは跡地利用計画に琉球大学医学部・同付属病院移転を中心とした「沖縄健康医療拠点」や都市公園、住宅地の整備などを盛り込む。米軍普天間飛行場を抱え、開発できる地域の少ない市にとって、基地跡地の大規模な開発による地域活性化への期待は大きい。

 「西普天間」を返還跡地開発のモデルケースとするため、政府は19年度の沖縄関係予算で、沖縄健康医療拠点の整備費用として、本年度当初予算に比べ84億7千円増の87億8千万円を計上している。

 一方、地域から要望の強かった県立普天間高校の移転は、県の買い取り開始の遅れから地権者からの土地取得が進まず、今年4月に計画が頓挫した。また、返還後に買い取り額が上がった土地について、市が返還以前に地権者向けに開いた説明会では、評価額が下がると説明していたことが判明するなど、地権者の不信感を招く事態も起きている。

 計画を着実に進める上で、地権者への詳細な説明や市民の十分な意向確認が必要になりそうだ。

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<地域活性化>商業地域の再興 核に

 市の大規模な地域活性化事業として、2016年度に開始した「普天間飛行場周辺まちづくり事業」が挙げられる。市北部の普天間地区と市南部の真栄原地区の2カ所の商業地域を再興させ、昨年返還された米軍普天間飛行場東側区域に整備する市道11号で結ぶ。人の流れをつくり、地域活性化につなげる狙いだ。総事業費は約90億円で、事業完了は25年度を予定している。

 一方で、課題は財政面だ。同事業は防衛省の75%補助を受けているが、市は残り25%の事業費を負担することになる。市では今後、西普天間住宅地区の跡地利用などで大規模な財政出動も見込まれる。厳しい財政状況の中、議会などからは、学校や公民館の建て替え着手の遅れを懸念する声も聞かれ、市の施策の優先度や事業費の精査が重要になる。

 経済振興では、県全体で好調に推移する観光需要をどう取り込むかも課題だ。ビーチがある西部の宜野湾海浜公園に比べ、市東部は普天間飛行場で分断されているため、北部に向かう観光客に“素通り”される傾向にある。関係団体とも連携した「着地型」の観光振興の在り方も問われそうだ。

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<自治会加入率>過去最低の26・9%

 人口増加が進む宜野湾市だが、自治会加入率は低下傾向にあり、今年3月末時点では過去最低の26・9%の1万1646世帯となっている。1989年の59・9%(1万3800世帯)と比べると、加入率は半減した。まちづくりや防災の面からも加入率向上による自治会活性化は喫緊の課題だ。

 自治会の活動は高齢者や子どもの見守り、犯罪の抑止、地域の美化活動など多岐にわたる。さらに全国各地で大規模な災害が相次ぐ中、地域の結束力が迅速な避難などにつながるとされ、自治会の役割が再評価されている。

 市内では、勧誘が難しい集合住宅世帯への広報強化や不動産業者らと連携するなど加入率向上に向けた取り組みが活発化している。地域活性化の面でも、今後も幅広い取り組みが求められそうだ。