相次ぐ事故、騒音も常態化
日米両政府による全面返還合意から今年で22年が経過した米軍普天間飛行場は、今も宜野湾市の真ん中に横たわる。歴代市長は県外移設や撤去を訴えてきたが、その間、市内では米軍機の墜落や部品落下事故が繰り返され、日々の騒音被害も収まる兆しはない。返還の条件として政府が名護市辺野古への移設を強行する中、一日も早い返還を求め県内移設を容認する人、「辺野古の人たちに同じ苦しみを味わわせたくない」と反対し続ける人と、市民は国策のはざまで今も揺れている。
22日午後、飛行場を見下ろす嘉数高台公園。ウオーキングで汗を流していた大城清光さん(75)=市愛知=は「普天間飛行場の運用停止、閉鎖返還は大前提だ」と断言する。基地がある限り、県内のどこにいても危険はあると感じている。「新基地建設は絶対に反対だ。孫の世代にも負担を強いるわけにはいかない」
同日夕、新城の祭りに足を運んだ30代女性=市新城=は、日々の騒音は「慣れている」と言う。しかし、近隣の普天間第二小で起きた米軍機の部品落下事故で「基地問題は人ごとじゃない」と感じるようになった。「早く基地はなくなってほしい」と願うが、危険性を実感した今、辺野古移設には「簡単に賛成はできない」。胸中は複雑だ。
市長選が告示された23日、ある候補者の街頭演説に耳を傾けていた男性(83)=市野嵩=は「普天間第二小の事故もあり、危険だから早く閉鎖してほしい」と望む。本心では県内移設反対だが、基地負担は既に限界を超える。「辺野古に造るのも仕方ない。住宅密集地よりは安全だ」と言葉少なに語った。
市に寄せられる騒音の苦情件数は近年、増加傾向にあり昨年度は432件と過去最高を更新した。本年度も今月20日時点で既に292件に上る。年間500件を超えるペースだ。この現状に市長選に立候補した仲西春雅氏(57)と松川正則氏(65)も、移設問題を最重要課題に位置付ける。
仲西氏は「来年2月の運用停止は(県と日本政府で)約束されており、守るべきだ」と無条件の閉鎖を訴え、辺野古移設には「反対する」と明言する。
松川氏は「一日も早い閉鎖、返還を求め、基地負担軽減に力を注ぐ」とする一方、辺野古移設では「国の専権事項であり、市からは発信できない」と賛否は明言していない。
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宜野湾市長選が23日に告示された。市長選の争点を探る。
(宜野湾市長選取材班)