宜野湾市長選 争点を探る(1) 米軍普天間飛行場 届かぬ声 揺れる市民


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
昨年12月に米軍機から窓が落下した普天間第二小の敷地に沿うように飛行するCH53E大型ヘリ。機体は事故機と同型=6月、宜野湾市新城の同校

相次ぐ事故、騒音も常態化

 日米両政府による全面返還合意から今年で22年が経過した米軍普天間飛行場は、今も宜野湾市の真ん中に横たわる。歴代市長は県外移設や撤去を訴えてきたが、その間、市内では米軍機の墜落や部品落下事故が繰り返され、日々の騒音被害も収まる兆しはない。返還の条件として政府が名護市辺野古への移設を強行する中、一日も早い返還を求め県内移設を容認する人、「辺野古の人たちに同じ苦しみを味わわせたくない」と反対し続ける人と、市民は国策のはざまで今も揺れている。

 22日午後、飛行場を見下ろす嘉数高台公園。ウオーキングで汗を流していた大城清光さん(75)=市愛知=は「普天間飛行場の運用停止、閉鎖返還は大前提だ」と断言する。基地がある限り、県内のどこにいても危険はあると感じている。「新基地建設は絶対に反対だ。孫の世代にも負担を強いるわけにはいかない」

 同日夕、新城の祭りに足を運んだ30代女性=市新城=は、日々の騒音は「慣れている」と言う。しかし、近隣の普天間第二小で起きた米軍機の部品落下事故で「基地問題は人ごとじゃない」と感じるようになった。「早く基地はなくなってほしい」と願うが、危険性を実感した今、辺野古移設には「簡単に賛成はできない」。胸中は複雑だ。

 市長選が告示された23日、ある候補者の街頭演説に耳を傾けていた男性(83)=市野嵩=は「普天間第二小の事故もあり、危険だから早く閉鎖してほしい」と望む。本心では県内移設反対だが、基地負担は既に限界を超える。「辺野古に造るのも仕方ない。住宅密集地よりは安全だ」と言葉少なに語った。

 市に寄せられる騒音の苦情件数は近年、増加傾向にあり昨年度は432件と過去最高を更新した。本年度も今月20日時点で既に292件に上る。年間500件を超えるペースだ。この現状に市長選に立候補した仲西春雅氏(57)と松川正則氏(65)も、移設問題を最重要課題に位置付ける。

 仲西氏は「来年2月の運用停止は(県と日本政府で)約束されており、守るべきだ」と無条件の閉鎖を訴え、辺野古移設には「反対する」と明言する。

 松川氏は「一日も早い閉鎖、返還を求め、基地負担軽減に力を注ぐ」とする一方、辺野古移設では「国の専権事項であり、市からは発信できない」と賛否は明言していない。

    ◇     ◇

 宜野湾市長選が23日に告示された。市長選の争点を探る。
 (宜野湾市長選取材班)