「普天間代替、全国候補に」 東京・小金井市議会、陳情を採択 来月、意見書可決へ


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 【東京】東京都小金井市議会は25日の本会議で、米軍普天間飛行場の県外・国外移転を国民全体で議論し、公正で民主的な手続きを経て決定するよう求める陳情を賛成多数で採択した。陳情は、名護市辺野古の新基地建設を直ちに中止した上で、代替施設が必要なら全国の自治体を等しく候補地にして「当事者意識を持った国民的議論を行うこと」を求めている。

 陳情は辺野古新基地建設の阻止に向け有志が取り組む「新しい提案」の実践に基づくもので、採択は全国初。小金井市在住で県出身の米須清真さん(30)が8月、市議会に陳情を提出していた。

 今月20日の市議会総務企画委員会を経て、25日の本会議に諮られた。定数24人のうち議長を除く採決の結果、旧民進系や共産などの賛成13、自民などの反対6、公明の退席4で賛成多数だった。

 採択を受けて市議会は陳情内容に基づく意見書案を作成し、10月5日の本会議で採決する。同様に賛成多数で可決する見通し。

 陳情では辺野古新基地建設問題を民主的、公正に解決する手順を示した。具体的方法として(1)辺野古新基地建設工事の中止と普天間飛行場の運用停止(2)米軍基地や代替施設が必要かどうか、当事者意識を持った国民的議論を行う(3)必要なら民主主義と憲法の精神にのっとり、公正で民主的な手続きにより決定する―ことを求めている。

◇「基地偏在は差別」 沖縄県出身者、市議に働き掛け

 小金井市議会に陳情を提出した米須清真さん(30)は議会の各会派を回って趣旨を説明したほか、委員会審査で陳述し、内容に理解を求めた。1人会派の議員も多く「国政の与野党に系列化されない政治的環境があったことも大きい」と話す。

 米須さんは5年前に小金井市に移り住んだ。基地問題の公正で民主的な解決に取り組む司法書士の安里長従さん(46)とSNSなどで意見を交わし、取り組みに「共鳴していた」という。5月に出版された安里さんらの書籍を読み「東京で暮らすウチナーンチュとして、住んでいる町でできることがある」と陳情の提出を決めた。当初11月に予定されていた知事選に向け政策論争を促す狙いもあった。各会派に説明する中で出会った、ある中道議員とのやりとりが印象に残っている。居酒屋に流れて議論するうち、日米安保を容認するその議員は「沖縄への偏在が差別」と説明する米須さんに次第に同調し、本会議採決でも賛成に回った。

 どの議会でも陳情案件が「継続審議」とされることは少なくないが、提出から約1カ月で採択に至った。米須さんは「ここまでとんとん拍子だったのは想像以上だが、議会での採択というオフィシャルな形で結果を出せた」と手応えを語った。

 「新しい提案」に取り組む安里さんは「本土の理解が得られないと言うが、国民全体で議論し、結果に責任を負うという当たり前の話がされてこなかった。意見書の動きが広がれば『辺野古が唯一』との政府の論法も瓦解(がかい)する」と指摘した。