平安山 国体・自転車競技V 痛みに堪え、差し切る 右手突き上げ、雄たけび


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成年男子スクラッチ決勝 自転車競技県勢初めての優勝を決めた平安山良希(日体大・左)=28日、福井県の福井競輪場

 成年男子スクラッチで平安山良希(北中城高―日体大1年)が国体自転車で県勢で初めて、日本一の座についた。25日の競技中の落車で負傷し、左半身を包帯で巻きながら、レース中何度も苦しそうな表情を見せた。それでもゴールを決めると、右手を「よっしゃ」と突き上げ、雄たけびが会場に響き渡った。自転車を降り、足を引きずりながらも「県大会、九州大会での優勝経験はあるが、全国大会の優勝が成年になって1年目でできて良かった」と充実感が漂う。祝福の言葉を掛ける県選手や県外選手の真ん中で笑顔がはじけた。

 初日のチーム・パーシュート予選で落車した。その際に左半身を強打し、救急車で搬送された。大きなけがはなかったが、擦り傷と痛みは残った。

 27日の予選に向かう前、落車で巻き込んでしまった同じく県勢の成海大聖(普天間高―鹿屋体育大1年)に「スクラッチで結果を残さないと顔を合わせられない」と意気込み、レースに挑んだ。しかし気持ちとは裏腹に「競技人生最悪のレース」となり痛みから足が回らなかった。それでも歯を食いしばり、ぎりぎりで予選通過を決めた。

 決勝も落車の影響で体のバランスも右側に崩れていた。いつもなら積極的に前を狙うが、最後尾に位置した展開となった。徐々に順位を上げ、上位に入ってきた残り7周。「ここでつかまったら終わり。逃げ切るしかない」とスパートをかけた。3位以下を引き離し岡山県の選手と一騎打ちに。リードを許す中、最後の1周で相手のスピードが落ちるのを見逃さずに残り100メートルで並び、最後50メートルで差し切った。

 ゆくゆくは日体大を背負える存在、その後は日本代表となり、競輪選手にも、と夢は広がる。「自分をもう一度見詰め直し、日本一を何度も取る有名な選手になって沖縄に帰ってきたい」。県内自転車界の歴史に名前を刻んだ平安山の挑戦はこれから始まる。

 (屋嘉部長将)