第73回国民体育大会・福井しあわせ元気国体は4日、福井県内で各競技が行われた。重量挙げの成年男子69キロ級で東京代表として出場した、リオデジャネイロ五輪4位の糸数陽一(豊見城高―日大―警視庁)がスナッチ135キロ、ジャーク162キロのトータル297キロで優勝し、国体4連覇を果たした。ライフル射撃では少年男子ビームライフル立射(60発)決勝で前泊佳吾(興南高)が準優勝した。ボウリングでは成年男子個人で大城安史(りゅうせき低温物流通)が4位に入った。ボクシングの成年男子ウェルター級の平仲信裕(芦屋大)は判定で初戦突破した。
◆世界銀、圧巻の試技/糸数
「糸数」の名がコールされると、会場中の視線が試技台に集まった。糸数陽一(豊見城高―日大、警視庁)は落ち着いた表情で台に上がり、シャフトを握ると、体重の倍以上ある重量を軽々と差し挙げて見せた。場内からは「すごい」と驚きの声が漏れる。世界選手権銀メダリストの圧巻の試技に、人々は終始くぎ付けだった。
成年男子69キロ級を3連覇中で、東京代表として出場した。4月に腰をけがしたが、「9割は状態が戻って来ている」と話す。それでも本調子ではない状態で臨んだ今大会で、王者の風格漂う試技で4度目の頂点をつかんだ。「沖縄の人たちに、良いところを見せられたかな」と喜んだ。
スナッチは135キロまで危なげなく3本とも成功させた。続くジャークは1本目の157キロを成功。2本目は「(けがで)練習中1度も触れなかった」という162キロのヤマ場。堂々と力強く差し挙げた。3本目の164キロは「他選手が先に163キロを挙げて、良い試技で焦ってしまった」とバランスを崩し、惜しくも失敗に終わった。
内容を振り返り、「まだ詰めが甘いなと感じた」と振り返る。11月からは、東京五輪の選考に関わる世界選手権を控える。挑むのは61キロ級だ。「一つでも上の順位に行って、ポイントを積み上げていく」。日本を代表するリフターは、強い決意とともに2020年の大舞台に向けひた走る。
(喜屋武研伍)
◆抜群の精神力で安定/前泊佳吾
競技を終えると、振り向いて笑顔で手を振った。ビームライフル少年男子立射60発で準優勝に輝いた前泊佳吾(興南高2年)。持ち前の精神力と仲間の支えをバネに、競技歴わずか1年半で国内トップクラスに駆け上がった。
これまでの最高位は、エアライフルで記録した西日本大会2位だった。迎えた初の国体は、「吐きそうなほど緊張した」本戦でいきなり県新記録の629・8点をたたき出し、ファイナルに進んだ。
序盤から高得点を連発し、中盤まで首位を走った。追い上げられる状況に「引き金を引くのが怖かった」。そんな時は「自分のプレーに目を向ける」と自らに言い聞かせ、10メートル先の、わずか1ミリの中心点をじっと見据えた。最高得点をはじきだすとガッツポーズを見せ、得点下位の選手が脱落すると拍手を送る。仲本正樹監督も「緊張感を力に変えていた」と絶賛した。
抜群の精神力を見せ、最後まで安定したショットを貫いた。「攻めていれば、結果は後から着いてくると思っていた」と前泊。「しっかり自分と向き合って闘うことができた。先輩方の応援もあり、きつい時も踏ん張れた。表彰台に立ててうれしい」と爽やかな表情を見せた。
(真崎裕史)