新県政発足 米識者に聞く 普天間、日米に重要な影響


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(左から)デービッド・シアー氏、マイク・モチヅキ氏、スコット・ハロルド氏

 【ワシントン=座波幸代本紙特派員】米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への新基地建設計画に反対し、翁長雄志前知事の後継として玉城デニー氏が知事選で圧勝した。玉城新知事と日米両政府の今後の対応を元米政府高官や識者はどう見ているか。デービッド・シアー前国防次官補、マイク・モチヅキ米ジョージワシントン大教授、軍事シンクタンク、ランド研究所アジア太平洋政策センターのスコット・ハロルド副所長に聞いた。

デービッド・シアー氏

代替施設なしは「背信」 シアー氏

 国務省で32年間、東アジアを担当し、オバマ前政権ではアジア・太平洋の安全保障担当国防次官補を務めたシアー氏。「沖縄の政治はこれまでも常に、日米関係に影響を与えてきた。とても大事だ」とし、知事選の重要性を指摘する。

 「どの知事ともお互いを知る期間が必要」とする一方、「長年、この問題に携わり、さまざまな代替案を検討したが、辺野古が唯一の解決策だと思っている」と主張。「代替施設のないまま、普天間から去れと言われたなら、米側には『日本政府の背信行為』だと映るだろう」とけん制した。

 海兵隊の訓練移転など、負担軽減策を上げ、「沖縄が望む全てではないが、県民の声を聞いてきた。白黒をつけられる問題ではなく、優先順位のバランスの問題だ」と強調。朝鮮半島有事が沖縄駐留の重要な理由としながらも、「北朝鮮問題が解決されても滑走路は必要だ。中国との有事が発生した場合には、できるだけ多くの滑走路が必要になる」とも述べた。

マイク・モチヅキ氏

新基地代わる案契機に モチヅキ氏

 新基地建設計画の見直しが必要と指摘してきたモチヅキ氏は今回の選挙結果を、「安倍政権は玉城知事、県政と共に、辺野古の新基地建設計画に代わる代替案に向けて、真剣な対話を始めるきっかけにするべきだ」と強調する。

 在沖米軍基地の問題を「日米同盟のアキレス腱(けん)」と指摘し続けてきた同氏は、安倍政権が新基地建設の強行を続ければ、「不公平な負担を強いられてきた県民の怒りを増大させる懸念がある。万が一、米軍機事故などが起こった場合にその怒りは爆発し、米軍にとって最も重要な嘉手納基地の存在も認めなくなるだろう」と指摘した。

 中国の抑止に必要なのは「日米同盟の安定かつ堅固な政治基盤と、沖縄を含め米軍駐留を支える地域住民の理解だ」と説明。日米両政府が在沖米軍基地の問題の対応を誤れば、中国が同盟関係を揺さぶるリスクがあるとし、「日米両政府は選挙期間中に上がった県民の懸念に向き合うべきだ」と主張した。

スコット・ハロルド氏

米は辺野古移設を維持 ハロルド氏

 玉城知事就任に、ハロルド氏は「翁長前知事の後任であり、米政府の現状維持は変わらない。喜んではいないが、新しい状況に直面しているわけではない」と分析。「辺野古移設が最も早く簡単な方法」とし、「米政府はこの問題は県民と日本本土の人々、日本政府の問題だと認識していると思う。県と米政府が直接交渉するものではない」と日米の政府間協議だと強調する一方、「在日米軍、在沖米軍の司令官は地域住民の協力に取り組む義務がある」と説明した。

 「日本政府は裁判で国の正当性を主張し、県の訴えを退けるだろう」とする一方、「万が一、宜野湾周辺で米軍機事故が起これば、米軍の沖縄駐留に対する県民の理解は得られず、日米同盟に危険をもたらす」と述べた。