曽祖父・山内盛彬の跡継ぎ 琉球音楽究める ひ孫・盛貴さん 沖縄県立芸術大学院で学ぶ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 斎藤 学
結婚式で「かぎやで風」を舞う山内盛貴さん(右から2人目)と妻の瑛美香さん(同4人目)=1日、那覇市の識名園

 失われつつあった琉球王国時代の音楽を保存した研究者・山内盛彬(せいひん)(1890~1986年)のひ孫・盛貴(せいき)さん(28)=千葉県出身=が、曽祖父の研究を継ごうと県立芸術大大学院で学んでいる。大学院での研究に加え、盛彬が保存したおもろ、クェーナ、御座楽、湛水流といった音楽を受け継ぐ人々にそれらの実演を教わっている。1日には盛貴さんと妻・瑛美香さん(26)=旧姓中村、静岡県出身=の結婚式が那覇市の識名園で催され、盛彬が保存した音楽を継承する人々がおもろやクェーナなどで祝福した。

 盛彬は王府に仕えた音楽家・学者の祖父から湛水流などを学んだ。さらに王府の元音楽家らを探し、楽曲を楽譜や文献に保存した。

 盛貴さんは昨年、芸大の修士課程に進学し、盛彬が保存した神歌(かみうた)(神に祈るための歌)などが今どのように継承され、発展しているかを研究している。「理論と実演の両方ができる研究者になりたい。曽祖父が保存した音楽を継承する各団体をつなぐ役目もできたらいい」と語る。

 妻の瑛美香さんは津軽三味線奏者で、中学の時に全国大会で個人2位になったほどの腕前だ。7年前に盛貴さんがインターネットに投稿した三線演奏の動画を見て、自身も津軽三味線の動画を投稿したのが2人の“出会い”。ネット上の交流から実際に会うようになり、絆を深めた。瑛美香さんも今年1月に沖縄に移り住み、結婚した。

 盛彬の代から交流のあった人々が結婚を祝福してくれたことに、瑛美香さんは「ありがたい」と笑顔を見せた。盛貴さんは「将来は妻と一緒に音楽教室を開いたり、ライブをしたり、音楽面でも一緒に歩んでいきたい」と話した。

 盛彬と交流のあった玉城流いずみ会家元で元県立芸大教授の又吉靜枝さん(75)が、盛貴さんに同大進学を勧めた。結婚式で新郎新婦が舞った「かぎやで風」も指導した。又吉さんは「自分のやるべきことを見据えて研究者として大成してほしい」と期待を寄せた。(伊佐尚記)

 山内盛彬 音楽家・音楽研究者。1890年、現那覇市首里生まれ。王府に仕えた音楽家の祖父・盛熹(せいき)から古典音楽の湛水流、野村流を学び、琉球の音楽を楽譜と文献に保存するよう託された。最後のおもろ主取(ぬしどり)(王府おもろを歌う職能集団の長)安仁屋真苅からおもろを学ぶなど、王府の元音楽家らを捜して祭祀(さいし)歌謡を受け継いだ。民謡の「ひやみかち節」や「屋嘉節」を作曲するなど、新たな音楽の創造にも力を注いだ。1986年死去。