【島人の目】新時代沖縄に期待


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県知事選での玉城デニー氏圧勝を伝える全国紙の南ドイツ新聞

 「ロックだ沖縄!」。玉城デニー氏の県知事当確を伝えるニュースを読んで、喜びと驚きとともに携帯のニュース画面に向かって声を出していた。自公などが応援し、巨額の金が投入されたといわれる相手候補の佐喜真淳氏を破り、過去最高の39万票を得ての圧勝に、デニー氏が掲げていた「新時代沖縄」の始まりを感じた。ドイツの全国紙「南ドイツ新聞」も1日付の政治面で「米基地反対派が勝利した選挙戦」と題した記事を写真付きで掲載した。

 記事は玉城氏が一度も会ったことのない米海兵隊員を父に持つことを紹介。辺野古沖での米軍基地建設に反対した翁長雄志前知事の闘いを継承する玉城氏が相手候補を「明確に打ちのめした」と伝えた。一方、佐喜真氏については「環境を破壊することにつながる辺野古への移設について、選挙戦で触れることを拒否した。有権者にとって安倍晋三首相と政権に強く支援されている(故の辺野古移設支持の態度である)ことは明らかだった」とした。

 記事には多くの県民が東京は沖縄のことを植民地のように扱っていると訴えていることや、軍によって環境がひどく汚染されていることなどが盛り込まれていた。玉城氏が「これまで野党の小さな政党に属する衆議院議員として米軍基地の大きな削減に取り組んできた」とし、「沖縄は20年にわたり、基地に反対し続けており、米国は交渉の姿勢を見せている」と結んだ。

 ドイツでは社会全体で、環境や自然保護に対しての関心が日頃から高い。政治面では東京電力の福島第1原発事故後、これまでの政策を変えて「脱原発」を決定した。

 8月に急逝した翁長前知事について、妻の樹子さんは貧困問題も基地問題と同じように大事にしていたと強調していた。複数のルーツを持ち、弱い人々に寄り添うことができる玉城氏は、希望ある沖縄の姿をどんどん見せてほしい。ドイツにもさまざまなルーツを持つ人がいて、互いを尊重し合って暮らしている。多様性があることでお互いへの理解が深まり、社会が豊かになっていくと、移民問題で揺れるドイツにいて、感じる。玉城氏の県知事としての手腕に期待したい。
 (田中由希香、ドイツ通信員)