伝統酒「イムゲー」復活 泡盛技術で原料を蒸留 請福酒造、多良川、久米島の久米仙


この記事を書いた人 琉球新報社
イムゲー(芋酒)の取り組みを発表した(左から)久米島の久米仙の島袋正也氏、請福酒造の漢那憲隆氏、多良川の砂川拓也氏、県工業技術センターの古堅勝也氏と豊川哲也氏=17日、那覇市泉崎のANAクラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー

 請福酒造(石垣市)、多良川(宮古島市)、久米島の久米仙(久米島町)の離島酒造3社と沖縄県工業技術センター(うるま市)が、100年以上前に県内で庶民に広く親しまれた伝統蒸留酒「イムゲー(芋酒)」を復活させた。2019年春にも商品化し、3社で同時に発売する。復活させたイムゲーを泡盛と並ぶ酒として発展させ、沖縄の酒造業界の活性化につなげる。県産のイモや黒糖を利用して離島の1次産業の発展にも期待を寄せる。

 イムゲーは約100年以上前に造られていた。首里王府の管理下で造られた泡盛と異なり、庶民に身近なイモや黒糖で自家用に製造していた。酒造3社と県工業技術センターは15年からイムゲーの研究を始め、現在の酒造設備で製造できる技術を確立した。泡盛の製造技術を駆使して米麹(こうじ)、サツマイモ、粉黒糖の3種類の原料を蒸留する。製造したイムゲーは酒税法でスピリッツに分類される。

 17日に那覇市内のホテルで会見した請福酒造の漢那憲隆社長は「泡盛と共に活性化させたい」と力を込めた。多良川の砂川拓也社長は「島の原料を使った地産地消の蒸留酒で、1次産業にも貢献できる」と話した。久米島の久米仙の島袋正也社長は「みんなで地域や産業を興していく。他のメーカーもウエルカムで、イムゲーを発展させていきたい」と強調した。

 19日に開幕する「沖縄の産業まつり」と11月3、4日の「2018八重山の産業まつり」、同23日から始まる「離島フェア2018」で、イムゲーを試験販売する。720ミリリットル、価格は1620円(税込み)。

<用語>イムゲー(芋酒)
 琉球王朝時代から大正時代にかけて醸造された蒸留酒。原料は雑穀(米麹(こうじ))、甘藷(かんしょ)(サツマイモ)、黒糖など。泡盛の製造技術を基にして1700~1900年ごろに県内の離島や首里以外の地域などで造られた。1896年「県統計書」によると製造戸数(事業者数)は泡盛が272戸、甘藷焼酎(イムゲー)は7566戸、製造高は泡盛は2万533石、イムゲーは2618石あった(1石=180リットル)。イムゲーは主に自家消費を目的に製造され、王朝文化の泡盛に比べて庶民の文化に当たるという。酒類の自家製造の規制や廃藩置県、米軍施政権下などを経て、製造は徐々に途絶えたとみられる。