国、対話要求を拒否 工事再開 前のめり 政府関係者「本気度示した」 辺野古対抗措置


この記事を書いた人 大森 茂夫
護岸工事が着々と進み土砂投入が予定されている大浦湾=2018年7月26日午前、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、沖縄防衛局は17日、沖縄県の埋め立て承認撤回への対抗措置に踏み切った。約8万票差の圧勝で誕生した玉城デニー新知事が対話での解決を求めた矢先に、政府が法的手段に訴えたことにより、県側の反発は必至だ。県は引き続き協議を求める一方、法的な対抗策を検討する。国と県の対立は法廷闘争の一歩手前まで来た。辺野古新基地建設問題は再び重大な局面を迎える。

 「やむを得ずやらざるを得ない措置だということだ」

 17日午前10時前、登庁時に法的措置について問われた岩屋毅防衛相はそう答えた。同日午後に対抗措置を申し立てる予定であることが既に報じられており、岩屋氏は「最終調整中だ」と付け加え、エレベーターに乗り込んだ。その約3時間半後、報道陣が待ち構える国交省水管理・国土保全局水政課を防衛省の職員が訪れ、段ボール箱に入った申立書を提出した。

■「いち早く」

 17日に政府が法的措置に踏み切ったことを、多くの関係者が驚きをもって受け止めた。一つは時期だ。県内選挙への影響を考慮して、21日投開票の那覇市長選が終わるまでは政府は対応を控えるとの観測があった。政府関係者は「あえて地元の事情に配慮せず対抗措置を取ることで、政府の本気度を示した」と語った。

 そしてもう一つは、行政不服審査法に基づく形で国交相に対抗措置を申し立てたことだ。2015年に県が埋め立て承認を取り消した際にも政府はこの手法を取ったが、国民救済を趣旨とする同法の制度を用いたことに対し専門家らから批判が相次いだ。今回は国交相ではなく裁判所に申し立てる方針が政府内でも検討されていた。当初「取り消しの時のような判断は取らない」と見通していた防衛省幹部は「いち早く工事が再開できる方法を選んだということだ」と説明した。

■矛盾

 「報道によると、行政不服審査法に基づく申し立てとあるが、その方向か」。17日朝、登庁時に記者団に囲まれた謝花喜一郎副知事は逆に問い掛けた。「前回に多くの行政法学者から批判があったやり方だ。考えにくい」と疑問を呈した。

 県庁内でも、今回政府が選んだ行政不服審査請求は、政府にとって“無理筋”だという見方が大勢を占めていた。実際に沖縄防衛局が国交相に申し立てた後は「おかしい」「最低だ」などと非難する声が漏れ聞こえた。記者会見を開いた玉城知事も「自作自演」など強い表現を使って政府の矛盾を突いた。

 会見で玉城知事は政府の姿勢を真っ向から批判した。特に強調したのは沖縄の「民意」についてだ。玉城知事が12日に就任あいさつで上京し、安倍晋三首相や菅義偉官房長官に対話の継続を求めたばかりだった。そのことに触れ「わずか5日後に対抗措置を講じた国の姿勢は、知事選で改めて示された民意を踏みにじるものだ」と訴えた。

 一方で記者からの質問に対し、冒頭で読み上げた「知事コメント」の一部を一言一句たがわず繰り返すなど“慎重さ”も目立った。法廷闘争を控え、揚げ足を取られる危険性を回避したいという思いが透けた。政府の判断に県幹部の一人は「早く工事を進めたくて焦っているのだろう。この理不尽なやり方にどう対抗していくか。始まったばかりだ」と徹底抗戦の構えを見せた。 (當山幸都、明真南斗)