【糸満】小菊の生産量県内1位を誇る糸満市で、台風24、25号による被害額が約1億9700万円に上っている。今後、強風などによる「立ち枯れ」や、停電の影響でつぼみが早期に付いてしまうなど市場に出荷できない物が増えることなども予想され、被害額はさらに増える見込みだ。植え替え用の苗不足も生産者に追い打ちをかけている。生産者は「台風は覚悟しているが、ここ数年大きい台風がなかった。久しぶりに来るときつい。みんな泣いているよ」と悲鳴を上げている。
市によると、市内の小菊の生産者は約60戸。2017年度の栽培実績は100・8ヘクタールで約4698万本。出荷額は約14億5600万円。
台風24、25号による11月~1月出荷分の被害は約1億9700万円。塩害や強風で茎が折れた被害などが報告されている。JAおきなわ糸満支店によると「11、12月の路地栽培での出荷は厳しい」という。強風で根が動き1、2週間後に枯れる「立ち枯れ」の被害も確認され始めた。
さらに台風24号では停電が続いた。台風前に電照菊の電球を片付けたが、その後3日停電したため、計4日間、電照できなかった畑もある。停電で電気ポンプが作動せずに断水し、葉に付いた塩を落とせなかった畑も多い。
生産者で組織するJAおきなわ糸満支店花卉生産部会は17日、台風時の停電で早期復旧できるよう支援を求める要望書を市に提出した。JAおきなわ糸満支店は「2回も台風が来て、生産者は精神的にも厳しい。今後は行政も含めて対応を検討できれば」とする。
一方、生産者に追い打ちをかけているのが苗不足だ。被害を受けた畑では、年末用から3月の彼岸用に苗を植え替える必要があるが、そのための苗が足りないという。JAおきなわ糸満支店は「3月向けに8~9割の苗は確保しているが、台風は想定外で植え替え分まではない」と説明する。
17日に市小波蔵の約1650平方メートルの畑で枯れた苗を引き抜いていた男性(34)は「立ち枯れが思った以上にひどく、植え替えることにした。もう1カ所の畑用の苗を使うが、苗が足りない」と語った。
市糸洲で30年にわたり小菊を栽培する照屋弘人さん(50)の畑では、約1980平方メートルの路地栽培が全滅、平張ハウスでは11月出荷用の小菊が倒れた。被害に遭った小菊を切って苗として植える予定だが、順調に成長するかは分からないという。「4日電気がつかず、丸1日断水もした。海が近くて塩害もひどい。年末用の出荷は減り、品質も悪い。苗が足りない農家までいて本当に大変だ」と肩を落とした。 (豊浜由紀子)