食道狭窄に再生医療 臨床研究を世界初実施 豊見城中央と中頭病院


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食道狭窄に対する細胞シート移植を世界で初めて実施した豊見城中央病院の新崎修院長(中央)ら=24日、県庁

 沖縄県の豊見城中央病院と中頭病院はこのほど、食道がんの術後に陥る可能性のある食道狭窄(きょうさく)に対し、患者自身の口腔(こうくう)粘膜から培養した「細胞シート」を移植する臨床研究を実施した。豊見城中央病院によると、食道狭窄に再生医療を用いる研究は世界で初めて。24日、県庁で記者会見した豊見城中央病院の新崎修院長は「沖縄県の再生医療産業において大きな転機となる」と力を込めた。

 食道狭窄は食道の一部が狭くなり、食べ物が通りにくくなる症状。食道がんの切除後に起こる場合がある。豊見城中央病院によると、食道がんの国内発症は年間約8千人で、そのうち約3千人が食道の3分の2以上を切除している。

 再生医療技術である「細胞シート工学」は東京女子医科大が開発し、2016年、豊見城中央病院に培養技術を移転した。これまでは食道狭窄が起きた場合、内視鏡バルーンによる拡張が2カ月~半年ごとに必要で、患者の負担が大きかった。細胞シートの移植により、狭窄の再発予防が期待されている。

胃カメラ先端のバルーンに置いた細胞シート(中央)を食道狭窄部に移植する様子(豊見城中央病院提供)

 初の臨床研究は7月、70代男性に対して中頭病院で行った。男性は6年前に食道がんを発症し、術後、食道狭窄を繰り返していた。本人から採取した細胞を豊見城中央病院で培養し、中頭病院に輸送。バルーン拡張で生じた裂傷部に細胞シートを移植した。施術した石原淳医師は「内視鏡で見ると傷がきれいに治っている。再狭窄も生じていない」と効果を強調した。

 今月18日には、豊見城中央でも70代男性に対して細胞シート移植を実施。両例とも経過は良好という。18年度に計6例の臨床研究を行い、外部の専門家を交えた事後評価を行う予定。

 食道再生の臨床研究はスウェーデンで実施例があるが、食道狭窄に対する研究は世界初。新崎院長らは「県内の施設でやり切れた意義は大きい。外部評価で有効と判断できれば、企業と連携し、再生医療製品として開発したい」と意気込んだ。

 研究は県の先端医療実用化推進事業の一環で、事業費は16年度から3年間で1億3900万円。