妻と生徒が演奏会 学院長の夫死去 ニューワァルド声楽院閉校危機も


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日頃の練習の成果を発表するニューワァルド声楽院の生徒たち=8日、北谷町の北谷ニライセンター

 【北谷】沖縄県北谷町のニューワァルド声楽院(新里寿子スクール長)は8日、北谷町のちゃたんニライセンターで第19回ハッピーコンサートを開催した。前スクール長で新里寿子さんの夫・朝保さん(享年80)が昨年11月に亡くなってから、初めてのコンサートとなった。朝保さんが亡くなり、閉校も考えていた寿子さんだが、生徒に励まされて継続を決意した。寿子さんは「生徒とみんなでつくりあげた。もう怖いものはない」とコンサートの成功を喜んだ。

指揮を執った新里寿子さん(手前)

 ニューワァルド声楽院は1998年に開校した。中学校で音楽教諭だった朝保さんの定年退職を機に始めた。県内では珍しいクラシックの声楽を学べることもあり、県内各地から生徒が集まった。これまでの生徒数は500人を超え、コンサートも開催してきた。

 昨年8月、体調不良が続いていた朝保さんに、末期のがんが見つかった。医師は寿子さんに余命3カ月と告げた。

 その年の11月3日にコンサートを控えていた。朝保さんも体調が安定していた時には、レッスンに顔を出して指導していた。当日のコンサートでは、フィナーレの「大地讃頌(さんしょう)」でタクトを振った。コンサートを終え、朝保さんは満足そうな表情だったという。その26日後、朝保さんは息を引き取った。

新里朝保さん

 朝保さんの死後、声楽院を続けられないと、閉校も考えていた寿子さん。そんな時、生徒から「楽しく歌いたいから続けてほしい」と伝えられた。朝保さんが生前、「寿子なら大丈夫」と周囲に語っていたことも知った。「頑張れるだけ頑張ろう」と決意した。

 迎えた8日のコンサート。約200人の観客を迎え、生徒たちと協力して運営した。朝保さんの代わりに寿子さんが指揮を執った。フィナーレはいつもと同じ「大地讃頌」。寿子さんは「朝保さんの力を借りた。そばにいるようだった」と笑顔を見せる。

 寿子さんは「(朝保さんと)出会った時から、この道に導いてくれたような気がする。生徒には家族のように支えられた。これからも大丈夫」と前を向いた。
 (安富智希)