家族史描く 布絵本44冊 故・山川裕美子さん製作


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山川裕美子さんが残した布絵本を手に笑顔を見せる麦の穂のメンバーたち=19日、宜野湾市立図書館

 【宜野湾】自身の“家族史”を紡いだ44冊の布絵本―。1年前に病で亡くなった故・山川裕美子さん(享年67)は生前、家族への愛情を込めた布絵本を毎年製作した。作品は子どもの成長過程や日常を描いた内容だ。山川さんが立ち上げ、約27年間代表を務めた読み聞かせサークル「麦の穂」(宜野湾市)は、17日から21日まで、宜野湾市民図書館で山川さんの作品の展示会を開いた。メンバーは「家族への愛情がこもっていて、温かい気持ちになる」と口をそろえる。

 「心温まる」と展示

 〈へやのすみでえほんをたべているのはだあれ(中略)それはしょうくんわたしたちのおとうと もうすぐ1さいのたんじょうび〉
 〈みんなせからしか かあさんもせからしか(中略)みんながやさしかことしっとう ほたっとって ひとりでやるっちゃけん〉

山川裕美子さん

 長崎県出身で1990年に宜野湾市に移住し、1男2女に恵まれた山川さん。絵本をかじっていた0歳の息子、思春期の子どもの気持ち、家族で行った山登り―。81年から2015年までの34年間で作った布絵本からは、山川さんが子どもたちに向けた優しいまなざしが感じ取れる。

 フェルトを重ねて作られ、1冊約20センチ四方。刺しゅうで絵や文字を描くほか、動物が飛び出したりして遊び心も満載だ。「麦の穂」の仲村ケイ子さん(56)は「本当にアイデアマンで、感嘆するばかりだった」と振り返る。屋久美子さん(59)も「いつも明るく気さくで、自然と回りに人が集まる人だった」と惜しんだ。

 生粋の絵本好きで、生前「若いお母さんたちに良い絵本を伝えたい」とお勧めリストをまとめていたという山川さん。昨年10月28日に他界したが、メンバーはその遺志を継ぎ、今月約400冊を掲載した冊子をまとめた。

 市民図書館の山内淳子館長(66)は「山川さんの布絵本は読む方も、聞く方も優しい気持ちになれる。多くの人に見てほしい」と話す。

 同図書館1階の読み聞かせコーナー「おはなしのくに」には、山川さんが亡くなった後、夫・哲雄さんが44冊を一冊にまとめた作品集「ありがとう」が展示されているほか、山川さんが図書館に寄贈するために製作した14冊も閲覧することができる。
(長嶺真輝)